城のち街

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「ここは……」 目が覚めると見覚えのある部屋に立っていた。 広く真っ白な四角い部屋の真ん中に白いテーブルが一つ、イスが二つだけぽつんと置いてある。 そのままボーっとしていると左手の壁に長方形の切れ目ができ、扉らしきそこから紅茶セットを持った人?が入ってきた。 「起きましたか」 「リンさん……その姿は」 「えぇ、その、中々気に入っているんですこれ」 初めて会った時と変わらぬ鹿の姿。それならやっぱりここは… 「俺は…また死んだんですか?」 笑おうとしてみるが自分でもわかる。リンさんから見てさぞひきつった笑い方をしているだろうと。 だが答えは違った。 「いえ、奈落の底まであと一歩だった、というところですかね」 それじゃ…俺は…… 「生きてるんですねっ!?」 「はい、そのことについて話したいのですが…まず座りませんか?」 「あっ、はい…」 ゆっくり座り周りを見る。対面に座っている人が違うというだけで何も変わっていない。 「どうぞ、あの時と同じものです」 差し出された紅茶を一口飲む。 美味い…… 「まず貴方の現状ですが、先ほど言った通り生きてはいます。此処はあの時と同じ内装の部屋であって、貴方の意識を連れてくるためだけに私が創った空間です。」 「じゃあ、俺の肉体は…?」 「アイリス城の一室で深い眠りについています」 まるで死んでるかの表現だな…… 「確かに、貴方が死んでるものと思っている人間は少なからずいますからね」 「へぇ……はい?」 「貴方が目を覚まさず既に八十六万四千秒、日数にして十日。魔法での治療を施すも一向に起きる気配なし―――死んでんじゃねぇか?……といった噂が城内に出始めています」 心を読まれた…いやそれより、十日?しかも死人扱い? 「仕方ないです。魔力欠乏中に無理に魔力を引き出し、仕舞いには三回目の力の使用。私も死ななかったのが不思議なくらいです」 「そこまでだったとは…」 「死人扱いは可哀想ですが、生きているだけ儲けもの、ですよ」 その時、鹿の着ぐるみがニコッと笑った。地デジカって笑えるんだ。 着ぐるみ的な意味で。
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