城のち街

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一応、俺の現状は分かったけど、まだ俺には訊かなきゃいけないことがある。 「リンさん、尋ねたいことが二つほどあるんですが」 俺の問いに少し間が空き、リンさんがゆっくりと頷く。 「……それに答えるために連れてきたようなものですからね。少し待ってください、この姿で話すことではないですから」 そう言うと、一瞬着ぐるみが光り前に見た神秘的な衣の姿になっていた。 地デジカ姿は息抜き用ってことか。 「……それでは、どちらから話しますか?」 訊きたいことは見抜いているらしく俺はまず訊く。 「俺の力を使うときのことなんですが」 「死を恐れないこと、ですね」 「はい」 俺の返事にリンさんは小さく息を吐き言う。 「貴方に力を与えた時に、力の行使が頭をよぎった瞬間から〈何も恐れないようになる〉というプログラムが組み込まれていたのです」 プログラムとは……あながち改造されたってのも間違っていなかったか。 「でも、何で?」 「普通の人間が死を恐れるのは当然、ですがそれでは危機に陥った時、我が身可愛さに躊躇してしまいますから。それでは仙道照之には勝てないとの判断だったのでしょう」 「そう…ですか……」 気分を紛らわすために紅茶を一口飲む。 何と言えばいいか、騙されていたかと言えばそうでもなく、俺の確認不足と言えばそれまでで。 「力には代償が着くものです。その力が強大であればあるほどに。しかし使わなければそれは全く価値のないものとなります。ですから」 リンさんの手がカップを持つ俺の手に添えられる。 「使うべき時を見定めるようにしてください。そして周りを頼ることも考えてください。幸い、貴方の周りには貴方の助けとなれる人が少なからずいるのですから」 「…分かりました」 優しく微笑むリンさんに形だけの返事をしておく。 正直に言えばまだ納得しきれていない、けど何か言える立場でもないからどうしようもないし…… 「…やはり、納得できませんか」 「…いえ、大丈夫なんでもう一つの方を」 仙道照之、あの人をなぜ殺すことを隠していて、なぜ殺さなくてはいけないかを。
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