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「?私たちもって…?」
「貴方もいずれ出会うはずです。彼女に」
いまいち話が読めない、誰のことを言ってるんだ?
「仙道とともにいた使いのことです。彼女もまた、長い旅の中で彼を愛してしまったのです」
うお……なんというか、禁断の恋みたいなそんな感じがする。
「禁断の恋…ですか。確かにそうかもしれません」
頷くリンさん、心を読むことがデフォルトになってる。
「と言うと?」
「本来、彼女は仙道を監視する役目も担っていました。ですが、彼女はそれを放棄しました」
無表情でカップを見つめながらリンさんは続ける。
「その結果、彼女は堕ちました。そうなると分かっていながら……」
その時、リンさんの持っていたカップの取っ手がパキリと折れた。
その折れ方は偶然折れたというより、純粋な力で折れた風で…
「あっ……すみません、すぐに片付けます」
そう言うとトレイの上に手早く破片を乗せ、早足に扉から出て行ってしまった。
「ふーむ……」
まるで無意識のうちに壊してしまったみたいな反応だったな。
リンさんが感情的になるのを初めて見た気がする。
「見苦しいところを見せてしまいました」
案外すぐに戻ってきた。
新たなカップを乗せたトレイを手に、リンさんは席に着き何事もなかったように始める。
「彼女は貴方たちの世界でいう堕天使、悪魔ともいえる存在になりました。そして二人は最大の禁忌を犯そうとしています」
最大の禁忌、ねぇ……鋼の……人体錬成的なもんかね。ははっ、いやまさか
「その通りです」
うぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
「セラを生き返らせるためだけに仙道は動いています。彼女もまた同じく」
「それが…殺さなきゃならない理由ってことですか?」
「民は無殺といえ、結果的に一国を滅ぼしたこともそうですが……『生命の蘇生など、世界の理を乱す神をも恐れぬ愚行…かな』……ということらしいですよ。あの方が言うには」
かなって、軽いな。
「あの方って?」
「神様です」
真面目な話なのだろうけど軽い。緊張感が大いに削がれたぞこれ。
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