城のち街

6/21
前へ
/605ページ
次へ
「?私たちもって…?」 「貴方もいずれ出会うはずです。彼女に」 いまいち話が読めない、誰のことを言ってるんだ? 「仙道とともにいた使いのことです。彼女もまた、長い旅の中で彼を愛してしまったのです」 うお……なんというか、禁断の恋みたいなそんな感じがする。 「禁断の恋…ですか。確かにそうかもしれません」 頷くリンさん、心を読むことがデフォルトになってる。 「と言うと?」 「本来、彼女は仙道を監視する役目も担っていました。ですが、彼女はそれを放棄しました」 無表情でカップを見つめながらリンさんは続ける。 「その結果、彼女は堕ちました。そうなると分かっていながら……」 その時、リンさんの持っていたカップの取っ手がパキリと折れた。 その折れ方は偶然折れたというより、純粋な力で折れた風で… 「あっ……すみません、すぐに片付けます」 そう言うとトレイの上に手早く破片を乗せ、早足に扉から出て行ってしまった。 「ふーむ……」 まるで無意識のうちに壊してしまったみたいな反応だったな。 リンさんが感情的になるのを初めて見た気がする。 「見苦しいところを見せてしまいました」 案外すぐに戻ってきた。 新たなカップを乗せたトレイを手に、リンさんは席に着き何事もなかったように始める。 「彼女は貴方たちの世界でいう堕天使、悪魔ともいえる存在になりました。そして二人は最大の禁忌を犯そうとしています」 最大の禁忌、ねぇ……鋼の……人体錬成的なもんかね。ははっ、いやまさか 「その通りです」 うぇぇぇぇぇぇぇぇ!? 「セラを生き返らせるためだけに仙道は動いています。彼女もまた同じく」 「それが…殺さなきゃならない理由ってことですか?」 「民は無殺といえ、結果的に一国を滅ぼしたこともそうですが……『生命の蘇生など、世界の理を乱す神をも恐れぬ愚行…かな』……ということらしいですよ。あの方が言うには」 かなって、軽いな。 「あの方って?」 「神様です」 真面目な話なのだろうけど軽い。緊張感が大いに削がれたぞこれ。
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5171人が本棚に入れています
本棚に追加