城のち街

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「神様はそういう方ですから」 職場は和やかにしたいってタイプですね、わかります。 「貴方も気づいているのでしょうが、彼女は私の大事な友です。けれど過ちを犯そうとするならそれを止めるのも友の役目。貴方が仙道と相対するとき、必ず彼女が出てくるはずです。その時は私が彼女を引き受けます」 「相対するって…」 思わず顔が引きつる。どうにも俺には仙道さんと戦う自分の姿が想像できないんだ「甘く考えてはいけません」が…? 「彼は害を齎す者に容赦はしません。貴方がそうなった場合、前の二人のように殺されるのは確実です」 「殺される……前の二人は……」 「どちらも彼に劣らぬ能力を持っていましたが、仙道の策に嵌り死にました」 俺も断れば死ぬってことか……。気紛らわしに紅茶を飲む。 やっぱり落ち着くなこれ。 そのまま空になったカップを置くと、リンさんが立ち上がり、俺の横まで来て御代りを注ぎながら俺に視線を降ろす。 「ですが、まだ時間はあります」 「時間?」 リンさんはカップに紅茶を注ぎ終え、ポットを置き続ける。 「一人だけ、彼の誘いを断り、尚且つ彼に深い傷を負わせ長い眠りにつかせた人がいます。仙道は今もその傷を癒すことに努めています」 それはずっと逢ってない旧友を思い出しているような昔を懐かしむ顔で。 「それは?」 「貴方よりも、仙道よりも遙か前の、唯一不老不死の能力を許された最古の使いです」 不老不死…だと……そんな人類の夢が叶った人が存在するとは、俺は嫌だけど。 いやまて、そんな人がいるなら俺とかは…… 「いらないと思うのも当然です。ですが不老不死とはいえ数百年も闘い続けその任は疾うに解かれています。あの人が仙道と戦ったのは自分の平穏を脅かそうとしたから、ただそれだけの理由です」 会ったこともないが、なんか穏やかそうな人がイメージできた。 そんな感想も簡単に読まれ、そのイメージがあっていたからかリンさんが微笑む。 「あの人はとても思慮深く、貴方の想像通り穏やかな人です。甘えの多い者には厳しいですけどね」 へぇ……会ってみたいな。 「俺は会えますかね?」 「貴方ならいずれ会うことがあると思いますよ」 俺ならか……意味深ですな。
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