5171人が本棚に入れています
本棚に追加
――――夢のようなものを見た。
第三者の視点のそれは、登場人物が二人で、片方は倒れていて、もう一人が涙を流していて、でもそれは靄がかかっていて誰かわからず、そして目が覚めた。
「ん……知ってる…天井だ」
そのままベッドから起き上がるとやはり、俺の(与えられた)部屋だった。
天井の一部に焦げた跡がある、間違いない。周りには誰もいず、上半身は何故か裸であった。
「何か着るもの……お、あった」
視界に入ったバスローブらしきものを着る。俺の服はどこに行ったのやら。しかし
「うーむ、話と違う」
話からしてもっと仰々しく、様々な種類の点滴をされ、プラス魔法での治療が行われてるかと思えば、現実を見れば誰もいないこの現状。
「マジで死んだ扱いされてるのか?」
そうなのか、諦められたのか?これは……泣きたい。
まず生きてますよ宣言をしに行かねば。そう決心し扉へと向かうと俺が手を掛ける前に扉が開く。
「過労で倒れちゃうよもう…………ん?……えっ!?」
メイドさんだった。
俺と目が合うと、三秒ほど見つめあい、メイドさんの表情が恐怖へと染まっていく。
そして一歩下がろうとするも足を引っ掛け尻餅をついてしまう始末。
俺は何かしたのか?…まあとりあえず紳士的な対応を。
「ひっ……」
手を貸そうとした瞬間、メイドさんの目に涙が溜まる。
さらに手を近づけると小刻みに全身を震わせ、必死に遠ざかろうと手をせかせかと動かし
「い、いや……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
仕舞いには一目散に逃げ出された。
廊下を走る中、少なくとも四回はこけてメイドさんは俺の視界から姿を消した。
それはまるで化け物に遭ってしまったみたいな対応だった。正直に言おう、すごく傷ついた。
「俺が何をした……」
よく見てほしいもんだ。どう見ても人間だっての。踵を返しテーブルの上にあったリンゴをかじる。
「うまい…まあこれで俺が行く必要もないか」
今頃あのメイドさんがメイド長なりなんなり、誰かしらの耳に入れてることだろうし。
そこで気づく、頭が妙に痒い。
「うーん、十日も経ってるわけだしな……風呂いこ」
のろのろと、風呂を探して十分弱。誰にも出会うことなく案外早く風呂は見つかった。
最初のコメントを投稿しよう!