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「そっか、大丈夫なんだ」
「うん」
腹が減ってるだろうと昼飯に向かう最中、どういう現状かをミーシャが事細かに教えてくれた。
後ろで何かがわーわーうるさくしてくるが気にしない。
「これでよかった…かね?」
王様と王妃様も全快ではないが生活に支障がないほどまで回復し、王子様も経過良好らしく王女様は…まあ元気溌剌で街を駆け巡ってるらしい。
ふと窓から外を眺めれば兵士庶民問わず家の改修工事に勤しんでるのが見えた。
「大変そうだな」
「うん、でもね」
ミーシャが一つ向こうの窓から同じように外を眺め言う。
「みんな生きてる。これが一番重要で、大切なことだと思うな」
「…そうだな」
同い年だってのに達観していらっしゃる。
「さ、行こ」
「そういえばどこに向かってるんだ?」
そう訊くと、ミーシャはくるっとこっちに向き直り窓を指さし言った。
「広場」
――――――
俺が服を着替えた後、やってきたのは南西の広場。フーと千夜は用事と言って逃げるように何処かにいってしまった。
「ほぉ、炊き出しか」
簡易式のテントで兵士が数人でスープとパンを街の人に配給している。
「みんな大変だから、王様の計らいってことらしいよ。さ、並ぼ」
ミーシャについていき最後尾につき周りを見る。
確かに家は壊れているがどうだ、街の人は皆せっせと逞しく働いている。
助け合いの心ってやつか。
「すごいな…」
単純にそう思った。
無償で誰もが助け合い、手を差し伸べる光景がとても眩しく感じる。
ミーシャも横でうんうんと頷く。
「素晴らしいことだよね。食事が終わったらあたしたちも手伝わなきゃね」
「ああ、うん」
そんな気はしてた。あの二人が飯だってのについてきてないんだから。
「けどまあ、十日も寝てたわけだしな。張り切ってやりますか」
働かざる者食うべからず。グッと腕まくりしやる気を見せてみると、今まで笑っていたミーシャが急に黙った。
「?…どうした?」
俺が訊くと、ミーシャは数秒困ったような表情を見せ、衝撃的な言葉を放った。
「なんで十日って言ってるのか分からないけど……翔が眠ってたのは……十二日間だよ」
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