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――――――
日が沈んでいくのを部屋の窓から眺める。主に資材運びを手伝い城に戻ってきたが
「十二日間……」
考えてしまうのはそのことばかりで、へましかけたこともしばしばあった。
長い思考の結果、あの場所での時間軸がこちらと異なっていた。それが一番それっぽく、納得がいくものだった。
そうなるとリンさんも茶目っ気があるというか、言ってくれればよかったのに。
「ふぁぁ~……ん~、おなかすいた…」
モコモコとベッドから這い出て開口一番、間接的に食べ物を要求してくるちび妖精にテーブルに置いてあったリンゴを投げる。
フーは小さな手を器用に使い自分の懐にリンゴを収めると、寝ぼけ眼でそれをほおばる。
逃げた後、ずっと寝てたようで。俺が眠ってる間、病人に効く薬なるものを探し回り、少し寝不足だったらしい。
つまりは俺は知らなかっただけで、フーはフーなりに心配してくれてたということで…今度何か買ってやろう、うん。
「さて……ん?」
ドアをノックする音、だが俺が返事をする前にぞろぞろと人が入ってきた。
「翔、入るよ」
「やあ戸神、昼間はお疲れ様だな」
「やっほー、久しぶりだね」
「王女様、そのような親しげに……」
「いいじゃないかガルシア。僕も失礼するよ」
二人目の阿呆にいつもなら突っ込みを入れるところだが、今回は開きかけた口を噤む。
来訪者が王女様に王子様ときては無暗な発言はできない。
「えっと、どういった御用で…ございましょうか?」
最上級の敬語がわからず、咄嗟に出てきた丁寧そうな言葉を口にすると、相変わらずラフな格好の王女様がビシッと俺を指さす。
「固い!!フレンドリーにいこうって私は言った筈だよ」
それに続き甲冑姿の王子様も笑いながら言う。
「ソフィアの言う通り、単に友人が来たという姿勢で構わない」
「はぁ……」
この二人が特別なだけか、そう割り切ろうとしてると何かが俺の横を飛び去り、王女様の胸に飛び込んだ。
「ソフィー」
「フーちゃん!!此処にいたんだ」
ひしっと抱き合いながら瞬時に自分たちの世界に入ってく二人。
2週間弱の期間一緒にいたからなのか、俺が寝てる間に随分とまあ仲良くなったもんだ。
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