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「それで一体どんな用事で?」
誰となしに訊いてみると、王子様が答える。
「最後に食事でもと思ってね」
そう言いながら王子様が手をパンッと鳴らすと、数人のメイドさんが扉から入ってきた。
素早く大きめの長方形のテーブルを運び入れ、人数分のイスを用意し、多様な料理が次々と運び込まれていく。
感心しながら三分もないぐらいでメイドさんたちは一礼すると消えていった。
「さて、食べようか」
皆がさっさと座り、空いた席に腰を下ろす。
左から俺、ミーシャ、千夜。対面に王女様、王子様、ガルシアさんの順。
フーは左斜め前のテーブルの端に座っている。フーの目の前にフルーツ山盛りがあるのは気にしない。
食事に対する挨拶を終え、皆が料理に手を伸ばし始めるなか王子様に尋ねる。
「それより…最後ってどういうことですか?」
「ん…あぁ、聞いてないんだね。君たちはもう帰らなければいけないらしいよ」
……ほぅ?
「え、帰るの?」
横のミーシャに訊くと、彼女はスープを掬ったスプーンを下ろし俺に向く。
「スフィアに翔が目覚めたことを伝えたら『長居してないで帰ってこい』だって」
「ふーん」
しかし今日とは急だな…迷惑かけんなってことかね。
目の前のスープを一口飲む。……うん、美味い。
――――――
「君は堅苦しいのが苦手とミス……あぁ、すまない、ミーシャに言われてね」
気まずい雰囲気の食事になるかと思ったがどうして、王子王女の大変なとこや、城の内情をディープな部分まで聞かされたりと、楽しい一時ってやつだった。
ただ、王子様が時たま千夜へのアプローチを敢行するもあいつが気づけるわけなく、王女様が必死に笑いを堪えてるのを見て思わず笑いかけたのは危なかった。
そして今、食器が下げられ代わりに現れた、食後のデザートの焼き菓子と紅茶を食しながら王子様が言うには両親は多忙なため、せめて自分たちはとお礼をするのが目的とのことで。
「君達が居なければどうなってたか結果は容易に想像できる。本当に有難う」
「私も感謝してもしきれません。父上母上に代わりお礼を申し上げたいと思います」
そう言い頭を下げる王子様と王女様。座りながらだけど。
もっと仰々しい感じになるかと思ってたけど……うん、堅くない。
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