城のち街

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―――――― 明りの殆どない街中からは星が良く見える。結界が張り直されてると聞いたが、見え方に差違がない。 時間帯としてはここまで暗いのは稀なことらしく、皆疲労が溜まっているようだ。 「それより…なぜそのような正装に?」 隣を歩く王女様は先程までのラフな格好から、初めて会った時のティアラを身に着け、煌びやかなドレス姿に変わっていた。 前を歩く王子様もまた、様々な装飾の施された燕尾服に着替えていて。 人の印象は服に左右されてしまうのも頷ける。 「すぐわかるよ…それより、敬語止めてくれないかな?君の方が年上なんだし」 何故か心底嫌そうに溜息を吐かれた。 「いや…それは…フーや千夜ぐらいなもんですよ。何も気にしないのは」 俺の言葉に王女様は意味深げな表情で千夜を見ながら言う。 「そっか…知らないんだ……じゃあしょうがないね」 この時は、意味が分からず訊き返せなかった。 そして俺がこの言葉の意味を知るのは当分先になるのだがこれはまた別の話。 「私、王女でしょ」 唐突に訊かれただただ頷くと王女様が続ける。 「いくら私がフレンドリーに接しても、結局はみんなどこか恭しくて。私を私として見てくれる人なんて殆どいない」 空を見上げながら語る王女様の瞳は切なげで。 「だからフーちゃんに会えて本当に……本当に嬉しかったの。私が王女なんて全く気にしなくて、ただ話してるだけなのにとても楽しくて……」 それはあいつが遠慮のない子だからとか、そんな空気の読めない発言は飲み込んだ。 さっきまで暗かった表情が、とても楽しげなものに変わっていたのだから。 「だからね、フーちゃんの親友の君に距離を置かれて話されるのは嫌なの」 最後らへんは睨まれるような形になっていた。 「……りょーかい、これでオーケー?」 これは仕方ない。仕方ないから俺を睨まないで下さいガルシアさん。 「ん、よろしい」 満足げに頷く王女に一つ訊く。 「そう言えば千夜はなんでダメなんだ?」 前を歩く千夜を指さすと王女はふりふりと首を横に振った。 「千夜は年上だからってお姉さんぶるから駄目なの。ミス……じゃなかった、ミーシャとは仲良くなれると思うんだけどなぁ……」 「あぁ……」 千夜と王女が二人で談笑してる図が想像できず、何となく納得してる自分がいた。 性格の不一致なんてざらにあるもんだしな。
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