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「そういえば、視えたってどういう意味だったんだ?」
もう敬語の欠片も見えないと自分に苦笑してしまう。
だがそれでいいらしく、王女は笑顔で自分の左目を指しながら言う。
「私の眼はね安全地帯が視えるの。セーフティーサークルアイって名付けてるのだ。どう、かっこいいでしょ?」
「え…うん……」
まんまとは言えない、ありきたりとも絶対に言えない。
「けど安全地帯って…」
「小さいころ家族で旅行してたとき、急に目の前が真っ青になって、怖くて逃げたらそこに魔法が撃ち込まれたんだ」
アハハと笑顔で懐かしい思い出のように語る王女。笑いながら言われても笑えません。
「以来、そんなことが何回もあって私は自分の特異性に気づいたの。今ではほらっ」
その言葉が合図だったかのように、金色の瞳が深い蒼へと染まっていく。
「自分の意志で力を発揮できるようになったの」
夜の街にうっすらと光る瞳はとても幻想的で思わず見入っていた。
「ふふん、綺麗でしょ」
自慢げに胸を張る王女にただただ頷く。
しかし、あの極限の事態でお気楽にいられた理由も納得だ。王女からすればあの場所は危険ではないと分かってたんだから。
こんなものを見せられては信じる以外ない。
「でも、何で俺に教えたんだ?」
「フーちゃんを危険な場所に連れてった訳じゃないって、知っといてほしかったから」
そこで申し訳なさそうな顔をされて思い出す。
あの時、俺はそこまで怒鳴ったつもりはなかったが、相手からすればそう見えたらしく理由を言っときたかったと。
「それに関しては別に、あいつが興味本位でホイホイついてったんだろうし」
「そうだとしても…一応ね」
それだけ言うと王女は大きく伸びをする。
「ん~、心配事もなくなったことだし、兄上も君に何か用があるみたいだし、シフトチェ~ンジっ」
本当に気にしていたらしい。憂いがなくなり表情に明るさが戻っていき片腕を元気よく突き上げ、前組に小走りで王女が走っていく。
そして入れ替わるように王子様が無表情のムーンウォークっぽいものでさりげなく俺の隣まで下がってきた。
なにこれ、怖い。
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