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「えっと、何か御用で…?」
少し見上げる形で王子様を見れば、正面を見据えその頬は何処か赤く見えた。
「畏まらなくていい。君に頼みたいことがあるんだ」
「頼みとは?」
訊き返すと王子様は前組を確認し、小さく、けれど聞こえる声で言った。
「そのだな……千夜のことを…そのあれだ、調べてほしいんだ」
「あぁ……」
もっと凄いことを頼まれるかと思ったらなんだ、色恋沙汰でしたか。
「いや、やはり今言ったことはわす「わかりましたっ」!?」
恥ずかしさのあまり、王子様がなかったことにしようとしたがすぐさま遮る。面白そうだからやってみせようではないか。
「今付き合ってる者がいるか、千夜の男性のタイプ、千夜を狙ってる者がいるか、告白された回数まで、全て調べて見せます」
「おおっ!!」
大袈裟に言ってしまった感が否めないが、どうやら王子様は感激してくれたらしい。
とてもキラキラした瞳でガシッと両手を握られてしまった。
「そうかっ、やってくれるかっ」
「え…ええ、やってみせます」
これはもう断れないな。
横でそうかそうかと嬉しそうに頷く王子様がなんか可愛く見えた。
――――――
そんなこんなで馬車の待つ街の入り口までやってくると、二つの人影が見えてきた。
「む、きたか」
「まったく、遅いです」
「団長、それにプリシスも。一体どうしたのですか?」
ガルシアさんが二人に駆け寄るのを後ろから眺める。
花の咲いたような笑みを見せながら兄と話す傍ら、ちょいちょいとプリシスさんが俺を睨んでくる。
「何でかねー」
ぼそりと呟くと瞬間移動でもしたのか、隣に立っていた団長さんがカッカと笑いながら言う。
「あやつも疲れてるのだ。まあそれが睨んでもいい理由にはならぬがな。それよりもだ」
団長さんは俺の方に向き直ると、俺より二回りくらい大きな手を向けてきた。
「まだしっかりと言っておらんからの。今回の一件、騎士団団長として礼を言いたい」
「え…あぁ…はい」
力強く手を握られ少し萎縮してしまう。
言葉ではなく目で語るというやつか、団長さんが俺の目を真っ直ぐ見つめてくる。
取り敢えずその……眼力が…凄いです。
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