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数秒ほど視線を交わし、団長さんがふっと笑う。
「少年なら大丈夫だな、杞憂だったようだ」
そう告げ手を放すとミーシャたちのほうに歩いていく。
何を心配されたのか検討がつかない。少しばかし悩んでいると、後ろから声が。
「団長があんな風に笑うのを久しぶりに見ました。なんです、顔芸でもしたのですか?失礼、元から貴方の顔は冗談みたいなものでしたね」
一気に声の主から離れたくなった。こんな毒吐くような人だっけ?
「何を固まってるのですか、冗談ですよ」
「本音にしか聞こえません……ふぅ、何ですかプリシスさん?」
振り返り彼女の顔を見ると、確かに疲労感が漂っている。言い方を変えれば年食ったように見える。
「いえ、伝えておこうと思いまして。私がフローヴァルまで同道しますので」
「へぇ……えっ?」
「何ですか、嫌そうな顔をして」
いかん、顔に出てたか。
「そんなことないですよ、それより疲れてそうなのに大丈夫ですか?」
「心配は無用です。貴方達がいなければ、兄様とああして語らうこともできなかったのですから……せめてものお礼です」
話し相手ではなく兄を見つめ話すプリシスさんの瞳に、危ない四字熟語が浮かんだが言わないでおく。
流石にないだろう、この人の中で序列の頂点は兄なだけだ。騎士としてはそれもどうかと思うが。
「何か言いましたか?」
「いえ、別に」
「あと貴方には言いたいことが山ほどあるので、帰りの道中…覚悟しておいてください」
それだけ言うとプリシスさんはガルシアさんのもとへ舞い戻っていった。
「モテモテだね翔」
団長さんとの話が終わったのか、クスクスと笑いながらミーシャが歩いてくる。その肩には人形のようにちょこんと座るちび妖精。
「それじゃあ代わるか?」
「うーん、遠慮しとこっかな」
愉しそうに笑いおって、俺も遠慮できるならしたいよ。
そこで何を思ったかフーが元気よく手を上げる。
「はいはいっ!!面白いことなら私がやりたいっ」
「残念、面白いこととは真逆の話だ。そうか、代わってくれるのか?」
「……ソフィー」
逃げやがった。
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