城のち街

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「それでは」 別れの挨拶をし馬車に乗り込もうとした時であった。 「ちょっと待って」 王女様の声に俺たちが振り返ると、アイリス城一同が横一列に並んでおり、王子様が一歩前へ出る。 「フローヴァルギルドの者たち」 「私はちが…むぐっ!?」 空気の読めない妖精の口をミーシャが素早く塞ぐ。無自覚で乱すなこの子は。 締まらない感じになりかけたが、そこは王子様が咳払いし場を戻す。 「私、アイリス王国が王子、クラウド・F・ルイス・アイリスは貴殿らの働きに心から感謝したい」 そして王子様が俺に近づき手を差し出し、戸惑いながらも握手をする。 「有難う……あと、頼んだよ」 最後は俺にだけ聞こえる声で呟き後ろに下がり、今度は王女様が一歩進み出る。 「私、アイリス国が王女、ソフィア・F・ルイス・アイリスは貴方方の勇気ある行動に敬意を表します」 王女らしく淑やかに振る舞われ、王子様と同じように握手を交わす。 今更だけど、俺がリーダーみたいになってる。依頼請けたのミーシャなのに。 そして王女も列へと戻り、沈黙が訪れる。 …やばい、どうすればいいのかさっぱりわからん。 「あの「堅苦しいっ!!」……」 恥を承知で尋ねようとした瞬間、王女もといソフィアが叫ぶ。 「だから嫌だったの、こんなの友達との別れっぽくないっ」 「お、おいソフィア…」 想定外の事態だったのか困惑している王子様を無視し、素早くソフィアは後ろの女子三人組の前に立った。 「また来てね、待ってるから」 その言葉を皮切りに唐突に始まるガールズトーク。何この置いてけぼり感? 正面では軽くため息をつく王子様を団長さんが慰めていた。 「上手くは行かぬものですな」 「いいさ…何となくこうなる気はしてたんだ。翔…でいいかな?」 「え…はい」 「こんな形になってしまって済まない」 「いえ、楽しそうですし、堅苦しいよりはいいので……」 対処法知らなかったし。 「そう言ってくれると助かる。さて、長く引き留めるのも良くないな。プリシス」 「はっ」 早足で俺の横を通り抜け、プリシスさんが馬車へと向かう。 「彼女は優秀だから、何事もなく君たちを送ってくれると思うよ」 「ああ、あいつは仕事はキッカリと熟すからな」 「兄の私が言うのもなんだが、プリシスは真面目だからな。安心していいぞ」 気づけば左右に陣取りプリシスさんを推す騎士二人。なんだ?男性陣の信頼度が妙に高い。
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