城のち街

21/21
前へ
/605ページ
次へ
そうですかと曖昧な返事で笑っておき、ミーシャたちの方を見るとなるほど、駄々をこねる性格ではないみたいだ。 ソフィアがまたねと三人に手を振り、こちらに向かってくる。 「気は済んだか?」 「うん」 兄の問いにそうは言うものの、少々名残惜しそうに見える。 随分と仲良くなったようで、フーに良き友達ができたのはとても喜ばしい。 あいつも色々抱えてるから、気の置けない人が増えるのは嬉しいというかホッとするというか……うん、なんというか、親心みたいなもんが生まれつつある。 だから彼女には俺のほうこそお礼を言いたいぐらいだ。 「フーはまたすぐ来ると思うぞ、俺は」 自然と口からそんな言葉が出ていた。するとソフィアが意外そうな顔をした後、クスッと笑う。 「ありがと、翔もまた来てね。今度は街を案内するから」 「ん、りょーかい」 ついで感があるが名前を呼んでくれたので気にしないでおく。お礼はまた調査結果とともに手紙で送ろう。 しかしまあ……ガルシアさんの目が痛いなー、俺信用されてないんじゃないか? ―――――― 「では、出発しますよ」 後ろからはーいと元気な声。もうソフィアたちの姿は見えない。 門は固く閉じられ、不自然に整備された一本道と両脇には荒れ果てた大地があるのみ。公道整備もこれからの仕事なのか。時間がかかりそうだ。 「ん……」 そよ風程度の柔らかな風が頬を撫でた。春の気候と言えど、風は少し肌寒い温度で。 「そして俺はなぜこの位置なんだ」 出発する際に荷台ではなく、何故か手綱を引くプリシスさんの横に座らされた。眠いのに、俺すっごく眠いのに。 「言ったではないですか、貴方には言いたいことが山ほどあると。まずですね、危機的状況だからといって、女性を投げるなんて言語道断です。貴方は女性に対しての配慮というものが――――――」 そして、少しばかり騒がしい馬車がゆっくりと、夜道を進んでいく。
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5171人が本棚に入れています
本棚に追加