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そうですかと曖昧な返事で笑っておき、ミーシャたちの方を見るとなるほど、駄々をこねる性格ではないみたいだ。
ソフィアがまたねと三人に手を振り、こちらに向かってくる。
「気は済んだか?」
「うん」
兄の問いにそうは言うものの、少々名残惜しそうに見える。
随分と仲良くなったようで、フーに良き友達ができたのはとても喜ばしい。
あいつも色々抱えてるから、気の置けない人が増えるのは嬉しいというかホッとするというか……うん、なんというか、親心みたいなもんが生まれつつある。
だから彼女には俺のほうこそお礼を言いたいぐらいだ。
「フーはまたすぐ来ると思うぞ、俺は」
自然と口からそんな言葉が出ていた。するとソフィアが意外そうな顔をした後、クスッと笑う。
「ありがと、翔もまた来てね。今度は街を案内するから」
「ん、りょーかい」
ついで感があるが名前を呼んでくれたので気にしないでおく。お礼はまた調査結果とともに手紙で送ろう。
しかしまあ……ガルシアさんの目が痛いなー、俺信用されてないんじゃないか?
――――――
「では、出発しますよ」
後ろからはーいと元気な声。もうソフィアたちの姿は見えない。
門は固く閉じられ、不自然に整備された一本道と両脇には荒れ果てた大地があるのみ。公道整備もこれからの仕事なのか。時間がかかりそうだ。
「ん……」
そよ風程度の柔らかな風が頬を撫でた。春の気候と言えど、風は少し肌寒い温度で。
「そして俺はなぜこの位置なんだ」
出発する際に荷台ではなく、何故か手綱を引くプリシスさんの横に座らされた。眠いのに、俺すっごく眠いのに。
「言ったではないですか、貴方には言いたいことが山ほどあると。まずですね、危機的状況だからといって、女性を投げるなんて言語道断です。貴方は女性に対しての配慮というものが――――――」
そして、少しばかり騒がしい馬車がゆっくりと、夜道を進んでいく。
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