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眠気覚ましのためと説教から兄の素晴らしさまで様々に語られ、洗脳されかけながらもやっとのことで荷台に赴く。
春の陽気に誘われ、木漏れ日が差し込む荷台の中で千夜とフーは身を寄せ合いながらぐっすりと眠っていた。
「勝負……勝負だぁ……」
「えへへ……もう食べれないよぉ……」
夜遅い出発だったため眠いと溢していた二人だからしょうがないといえばしょうがない。
物静かな、小鳥の囀りさえ鮮明に聞こえるこの状況で俺も普段なら寝るしかない、眠いし。だが尋ねたいことがあり、偶然にも起きているのは俺とミーシャだけ。
フードはしておらず、一人分空いた隣に座る。ミーシャはどこを見るでもなく、ただぼんやりとしていた。
寝てないいんだろうか?
「なあ、ちょっといいか?」
「…………」
「……おーい」
「え、私?」
「いや、起きてんのミーシャと俺だけだから」
「ぁ……ほんとだ。翔、戻ってきたんだ」
「ああ……大丈夫か?」
「ごめん、なんかいろいろ考えちゃって……」
聞かなくてもわかる、魔族のことだろう。確かにあれはミーシャ自身の手で終わらせたとは言い難い結末だった。今はそっとしておいたほうがいいかもしれない。
「やっぱ俺の話はまたにするよ。そんな重要な話じゃないし」
するとミーシャはクスッと笑みをこぼし言う。
「そんな心配しなくてもいいよ、私は大丈夫だから。何でも聞いていいよ」
その言葉が無理をして言っているようには見えずついつい俺は聞く。
「じゃあスリーサイズでも」
「そういうのはダメ」
駄目か、しかし冗談を簡単に返してくれるあたり踏み入った話だが聞いてもいいかもしれない。俺は慎重に言葉を脳内で選びながら聞く。
「ミーシャがさ、ミストだってこと誰か知ってる人はいたのか?」
「そうだね……スフィアにレイアさん、エアリィさんにあと……叔父さん。その四人は気づいていたと思う。あとは分からない」
あの姉妹は納得できるしエアリィさんに関してはそんな雰囲気があったけど、店長さんもか。
「誰もミストとして……復讐を止める人はいなかったのか?」
「間接的に止められたりはしたかな、けど叔父さんは……私を助けられなかったことを後悔していて……止めるに止められなかったんだと思う」
「そっか……」
店長さん…………
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