街のち帰宅

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あと一つ、触れるべきじゃないのは分かってるが聞いておきたい。時間を置いた方がいいとも考えたが、今聞くべきな気がした。 「ミーシャが……人殺しってホントか?」 我ながら配慮のない訊き方をしてると思う。それも年頃の女の子に。自分の馬鹿さに言ってから頭を抱える。 その問いに、ミーシャはやっぱりとでもいう風に苦笑し上を見上げる。 「そうだよ、私は人を殺してきた。それも一人や二人じゃなく、もっと多くの人をね……」 「…………」 「翔はさ、スフィアから私がどういうタイプのギルド員かって聞いたよね」 「ああ」 隠密……そして暗殺という裏稼業みたいな役職。あまり気に留めてなかったがそれが親しい人であれば話は違う。 「守るために誰かを犠牲にする。聞こえはいいけど、結局、私はただの人殺しで。強さを求めて走り続けて……気づいたら何も無かった」 少し息を整えミーシャは続ける。 「振り返ってみれば、私が殺めてきた人の影しかなくて……進むしかなくて……いつの間にか割り切るようになってた。仕方ないんだって、誰かがやらなきゃならないって、自分を正当化することで、自分を保っていた」 そう自嘲するように語り、儚げな眼をして俺に尋ねてくる。 「……どう、軽蔑した?」 「するもんか」 即答。 そしてジッと俺を見てくる感情のない瞳。目を逸らさずクワッと見返すと、その答えが嘘ではないと伝わったのか安心したように少女は微笑む。 「翔なら…そう言ってくれると思ってたんだ」 「どゆこと?」 「その答えが予想できたから、私は君に話したんだと思う…ううん、確信してたから」 「…………」 彼女の言いたいことが、何となくわかった。嫌われる可能性のある人に話したい事柄ではない。確証があったから話せた、と。 「ずるいよね、私って……ほんとにずるい」 そうして、ミーシャはまた自嘲的な笑みを浮かべる。けど俺はそうは思わない、だってそれは 「ずるくなんてないさ。それは言いかえれば俺を信頼してくれてるってことなんだから。何もずるくない」 寧ろ、信頼の証といってもいい。信じれたからこそ話せる、ずるいなんて欠片も思えない。嬉しいくらいだ。
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