街のち帰宅

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―――――― ここまで二人で話すというのも、思い返してみると初めてだった。 いや、話すというより俺がミーシャの喋ることに相槌を打ってるだけなんだけども。 「私も逃げるわけにはいかなかったから…………これで終わったのかと思うとなんか……よくわからないや」 彼女は今までの事を、魔族、そして自分の思いを吐露していた。 嬉しそうな、悲しそうな、そんな表情でミーシャは俺ではない何かを見ていて。 どんな思いで過ごしてきたのか俺には分からないけど、それが彼女を縛り、苦しめていたことは分かる……いや、軽々しく分かるなんて言うべきではないか。 魔族という鎖から解放され、昔のような日常を過ごす。時間は必要だろうがミーシャには彼女を待つ人がいる。だから自分を見失うことはなく、前へと進んで行ってくれる筈だ。 店長さんも、マスター率いるギルドの皆もいる、フーも、微力ながら俺もいる。これからミーシャが辛い記憶を忘れるぐらい、充実した、心から楽しいと思える日々を過ごせる未来がある筈だから。 だから今はその必要な時間だと思うから、そっとしておくというのが積極性のない俺の意見で。 「…………そっか……」 もう格好良いこと言えない。 「翔って思ったより聞き上手だったんだね。ありがと、聞いてくれて」 優しく笑うミーシャ。少しでも役に立てたなら良かった。 「いえいえ」 「なんか眠くなってきちゃった。私も……ちょっと寝ようかな」 さっきよりも柔らかな笑みの後、小さく欠伸をするミーシャはとても眠そうで、俺もこれ以上訊く気もなく。 「ああ、お休み」 「うん、お休み……」 それから1分と経たぬ間に隣からすやすやと寝息が聞こえてきた。 上を見上げ、何とも言えない感傷に浸っていると、視界の端に光る何か。それはミーシャの頬をすっと流れ落ちていった。 それが涙とすぐ理解するも何に対しての涙か、復讐が終わり安堵したのか、それとも遣り切れない思いからなのか、昔の夢でも見ているのかと無粋にあれこれ想像して、結局分かる訳もなく、眠くなり、俺も寝ることにした。
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