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「もうすぐ着きますよ」
その声で目が覚めた。周りを見ると隣のミーシャも、千夜もぐっすりと寝ていたがフーだけは用意されていた朝ごはんを一人食べている。
少しの間眺めていると、俺に気づくことなくフー専用に用意されてたとしか思えない朝飯を平らげ俺と目があった。
「あ、おはよー」
変わらぬ笑顔に俺も挨拶し返す。
「はよ。もうすぐ着「到着です」…あぁ、到着したって。おほん、フレリア二等兵、今すぐ二人を起こすのだ」
「ラジャー」
急なボケに律儀に反応し、フーは飛びつつ交互に熟睡してる二人の頬を叩いていく。
「ん…痛い……あ、フーちゃん。ならいいや…おはよう」
「おはよー」
ミーシャを起こし、次はと全く起きない千夜へと飛んでいく。
しかし、ならって何だ?俺だと何かあったのか?おお怖い。
「ん~……うあぁ~……」
呻く千夜。
一人はすぐ起きたのに、もう一人は蚊を追い払うような仕草で手を振り、フーもヒットアンドアウェイで応戦するも一向に起きる気配がない。だめだこいつ。
「あー、もういいよ。検問所に寝かしとこう。先生、頼んます」
横の少女に頼むと苦笑しながらも立ち上がり、そのまま軽々と寝坊助を背負い俺たちは外へ出た。
「とても懐かしく感じる」
「貴方が長く寝ていたせいだと思います」
聳え立つ壁を見ながら呟いてると後ろから棘のある言葉。
「いやぁ、ご苦労様です」
振り返りながらそう言いプリシスさんの顔を見ると、目元に隈ができていて。
「何です、じっと見て」
「いえ…別に」
指摘すると怒られそうだから心の中で。有難うございます。
「兎も角、貴方達を無事に送り届けましたので私は帰ります」
そう言うと別れの言葉もなく身を翻し、颯爽と馬車へと戻ろうとするが、ぐぅ~と間の抜けた音がその場に鳴り響く。
「…………」
「…………」
俺は何も言わない。目の前で耳を真っ赤にしてプルプルと震えるも、言葉を発しない彼女の名誉のために何も言わない。
というか何か言おうものならビンタされる気しかしない。
だがそんな彼女の前に回り込み、笑顔で語りかける猛者がいた。
「お腹すいてるの?ならご飯食べに行こっ」
流石フー。俺にできないことを平然とやってのける。そこに痺れもしないし憧れもしない。
つーかまだ食い足りないのかよ。
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