街のち帰宅

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久しぶりのフローヴァルは、ミーシャだけでなく俺も暖かく迎え入れてくれた。 知り合いに声を掛けられ、出会う人に挨拶を返しつつ天心へ向かう。 入り組んだ道を抜け帰ってきた我が家はいつもより静かで。 「休業日か?」 横でミーシャも疑問符を浮かべ首を傾ける。 「この時間にそれは……」 ミーシャが呟きながら戸を開ける。その瞬間、中華の香ばしい匂いが鼻と腹を刺激する。 休みではなくちゃんと客はいた。二人だけど。 左の料理が之でもかと載せられたテーブルで黙々と食べ続けるフーと、その対面でナプキンで上品に口を拭くプリシスさんの姿。 そして二人に声を掛けようとしたとき、奥から店長さんがやってきた。 その表情は限りなく無表情で、何時もとは違う雰囲気を纏い俺たちの前に立った。 「叔父さん、その……」 ミーシャが何か口にしようとするも言葉が出ず俯いてしまう。 その光景を店長さんは静かに見て、やがてゆっくりと言葉を口にする。 「終わったのか?」 子供に対するような優しい声色でそう問う。その言葉にミーシャはぱっと顔を上げると、静かに頷いた。 「そうか……」 漏らすようにそう呟くと、無表情だった顔がくしゃりと崩れ、店長さんは壊れ物を扱うように丁寧に、優しくミーシャを抱きしめた。 「頑張ったな……」 「っ!!……うん」 抱きしめあう二人を見て思う。数年間、互いに苦しんで、悩んで、それがやっと終わったのだ。取りあえずこの暖かい時間に何が言いたいかというとこれが真の家族だと、その一言に尽きる。 一人納得してると不意に肩に手が置かれる。 「お前もだ、頑張ったな」 「いえ俺はそんな…」 「お前には言いたい事が沢山あるがまずはだ……有難う」 店長さんに頭を下げられる日が来るとは思わなかった。 どうにも言葉に詰まってると店長さんが顔を上げ何時もの威厳ある表情で言う。 「さてだ、腹も減ってるだろ。席に座れ」 促され席に着き気づく。プリシスさんの姿が何処にもなく、代わりに一枚の紙切れがテーブルに置かれていた。 見れば『御馳走様でした、美味しかったです。また来るかもしれません。それと戸神翔……そのですね…………ありがとう』、そう書かれていた。口では言わないのがなんとも彼女らしい。俺も面と向かってありがとうなんていわれる姿が想像できないしな。
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