帰宅のち日常

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フローヴァルに帰ってきて三日が過ぎた今日。 街は人の往来が絶えず、相変わらず活気に満ち溢れているが、路面の反射する熱量が少々増えた気がする。 つまりは暑い。 「ほら翔、ピシッとしなきゃ」 街をだらだらと歩く俺の背中を軽く叩き、笑いかけてくる猫耳少女。 赤を基調とし、金の刺繍が織り込まれたチャイナドレスはやはり彼女によく似合う。 一片の邪心もない笑顔で、天心の看板娘ことミーシャは語りかけてくる。 「何の呼び出しだろうね?…って決まってるか」 そう、俺達は呼び出しをくらったのだ。ギルドに顔を出さずにいたからか、俺とミストに召集の令が下ったわけで。 だがミーシャはもうミストとして生きてくつもりはないと、いつもの姿で赴くことを決めたようで。兎も角、俺がとやかく言うべきではない。 「さて、行きますか」 ギルドの扉を開け中に入れば変わらぬ騒がしさ。 そのままマスターのもとへ向かおうとしたとき、右前の席からニヤニヤしながら手招きするおっさんが一人。 「お前たちいいとこに来たな。クエスト先で面白い遊戯物を手に入れたんだがやらないか?」 見ればハンクさんの前に、面妖な紋様の描かれた箱が置かれていた。怪しい。 「今はマスターに用があるんで。そういえばリックさんは…」 軽く断り話を変えると、ハンクさんはあぁと面倒臭そうに上を見る。 「あいつもマスターのとこだ。今回やらかしやがったからな」 その言葉にミーシャが苦笑する。 「またなんだ」 「またって?」 俺が訊き返すとハンクさんが答える。 「リックは丁寧な仕事ができないんだ。馬鹿みたいに家を何件か壊してな、こっちの身にもなれって話だ」 疲れたように溜息を吐くハンクさんに酷いですねと言おうとしたが、俺もやらかしたようなもんだから言えない。 「ま、用があるなら先に行って来い」 酒を一口、諦めたわけではないようで。そのまま先へ向かおうとするもまた呼び止められる。 「そこの二人、ちょっとこっちに来なさい」 カウンターにドンとジョッキが二本、中身が飛び散る勢いで激しく置かれた。 「ほら、早く来なさいよ。飲み物もあるから」 エアリィさん、何時ものほんわかした笑みじゃない、目が笑ってないです。
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