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「お前にとってもそれが一番いいだろうな」
「ごめんね」
「心配するな、手続その他諸々、私が手を回しておく」
そう言うと、マスターはミーシャに近づき胸辺りにグーを置く。
「これからは自分の為に生きて行け。お前を苦しめていた柵は消えたのだからな」
そう笑いかけるマスターの横から同意の声。
「姉さんの言う通りよ」
レイアさんはミーシャに近づくと背後から優しく抱きしめた。
「まったく、心配かけて……けど、よく頑張ったわね」
「はい……」
慈愛に満ち溢れるその姿は正に聖母のごとし。母性ぱねぇ。いいなぁ、いいなぁ、俺も抱きしめてもらいたい。ぎゅっと抱きしめてもらいたい。その豊満なボディに包まれたい。
そんな邪推をしてるとちっちゃい方が目の前に。
「貴様もよくやった」
軽くグーで胸を叩き、初めてでないだろうか?マスターが口角を上げ俺に笑いかけている。しかしなぁ…
「……ふっ」
「おい、人の体を見て鼻で笑うとはどういう料簡だ貴様」
褒められたのは素直に嬉しいがどうにもね。
「足りない」
「まて、足りないとは何がだ。返答如何では貴様もあれと同じにするぞ」
指差す先にはリック像。目を閉じ安眠リック像。にへらと笑顔なリック像。
「快適なんですかね?」
若干馬鹿にしたように訊くと、マスターが無言で近づいていきリック像を蹴り飛ばした。
「おおっ」
盛大に砕けるかと思ったが絶妙な力加減で蹴られた像はカーペットの上を滑っていき、廊下の奥の壁まで行って砕け散っていった。氷から脱出したリックさんはまだ寝ている。
「ふん、反省してない馬鹿はどうでもいい」
踵を返し、マスターは机から二つの小さな袋を出す。
「今回の報酬だ。受け取れ」
手渡されたそれを確認すると、中には金貨が五……って五枚も!?
「こんなにいいんですか?」
「それに値する働きはしたのだからな。素直に貰っておけ」
「はぁ……ん?」
ミーシャを見ればなんか目を丸くして相当驚いてて。気になったので袋を覗く。
「どれどれ、一、二、三……十?」
あれ、俺の倍あるぞ?
俺とミーシャが疑問の表情をマスターにぶつける。するとマスターは子恥ずかしそうに頬を赤らめ。
「まあなんだ、これからは一人の娘として生活してくのだからな。欲しい物も色々とあるだろうし……あれだ、ミストへの餞別としてだ。だから黙って受け取れ」
「スフィア……」
マスター……粋ですな。
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