帰宅のち日常

7/48
前へ
/605ページ
次へ
「……もう少し待ってくれませんか?いつか話しますんで」 結論、先送り。この二人を信用していないわけじゃない、俺自身まだ時間が欲しいから。 少しの間の後、俺に話す気がないと分かったマスターは息を吐いた。 「…この調子だと他も話す気はなさそうだな。無理に訊く気はない、もう行っていいぞ」 しっしと手を振り出てけと促される。 「それでは」 扉を閉め外に出て一息。迫力の割には簡単に引き下がったのが気になるけど…いいとするか。 考えるのをやめ、俺は爆睡しているリックさんを拾い階段を下りていくなか、ふと脈を測ってみる。鼓動はするな、うん生きてる。 ―――――― 「いいの、姉さん?」 翔が出て行った一室でレイアは不思議そうに尋ねる。彼女も少年同様、姉が簡単に諦めたことが疑問だった。そんな妹に姉は資料を捲りながら言う。 「問い詰めてもあいつは言わんさ。へらへらしていたがぶれてはいなかったからな」 「でも」 自分も気になっていたため、食い下がるレイアにスフィアは本棚から本を取り出しつつ言う。 「それにだ、仙道照之、どこかで聞いた記憶がある。書類整理の片手間、私が調べておくさ」 そう言うと一冊、また一冊と、並々ならぬ速さで文献を漁っていく。 気になってしょうがないんじゃないとレイアは心の中で苦笑し、同じように本を一冊取り出しページを捲っていく―――――― ――――――― 「はい、お届け物です」 「何だこいつ、生きてんのか?」 「脈はあります」 テーブルに乗っけたリックさんを叩くハンクさんにそう告げる。 背負って分かったがリックさんは異常に平熱が高い。これが氷の中で元気な理由なのか……んなわけないか。 馬鹿を考えているとリックさんの顔に手を乗せたままハンクさんが言う。 「それよりもだ、こいつも来たことだ。これ、やら「翔く~ん、ちょっと来て~」……先に行って来い」 「……ういっす」 仕方ないね。 声に従いカウンターに向かうと、エアリィさんはにっこりと笑いカウンターの下を漁り始め、出てきたのは二枚の紙。 「すっかり忘れててね。はい、君に依頼よ」
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5171人が本棚に入れています
本棚に追加