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「えっと、今の質問は…」
「ああ気にしないで。俺が毎回依頼者になんとなしに訊いてるだけだから」
嘘だけど。
「で、依頼の前に訊きたいんだけど、俺の名前何で知ってるんだ?」
すると少年は意外そうな顔をして言う。
「戸神さん、有名ですよ。妖精の召喚士でひっそりと天心に住み着いてる人って」
なにその妖怪みたいな噂。どうでもいいけど。
「おっけー、じゃあ次は依頼について」
「それは……」
少年は急に顔を赤らめ、俯きポツリポツリと話し始める。
「僕、好きな人がいるんです……」
そこで途切れる言葉。期待したように俺を見つめるフィッツオレンジ君。……相槌打った方がいいのか?
「……へぇ」
「それでですね」
正解か。
「今まではその人を見ているだけで十分だったんです」
「ふむふむ」
「けど、僕も今年で15歳になります」
「15、青春だね」
ちなみに俺は今年で18。まだ、まだ青春時代だ…くそっ。空しさを覚える中、フィッツオレンジ君は一旦息を深く吸い込み続ける。
「ですから、いい加減遠くから見てるだけの自分を卒業したいんです」
「あるある」
「でも僕は弱虫で、意気地がなくて……」
「ほぉほぉ」
「でも一歩進みたくてっ」
「良いことだ」
「ですのでっ」
「ん?」
唐突にテーブルに手を置き、綺麗なサラサラの茶色の髪が荒ぶる勢いで頭を下げてきた。
「戸神さんに手伝ってほしいんです!!お願いします!!」
つまるところ恋愛相談か……頼む相手間違えちゃあいないか?
「そのだな「お願いします!!」…………」
近年稀にみる純情少年だな。どこぞの奥手な王子様を思い出すよ。そういや千夜の調査しないとなぁ。
「お願いします!!」
俺が他の事を考えてる間も頭をテーブルに着け必死に頼むフィッツオレンジ君。
まあ、俺を指名してくれたわけだし、無下にもできんか。
「わかった、わかったから頭を上げて」
俺の言葉に顔を上げ、フィッツオレンジ君は喜色を浮かべていた。
「本当ですか!?ありがとうございます!!」
「うん、大丈夫だから。取りあえず顔が近い」
「す、すみません……」
「いいよ、で、誰?」
するとまたも、もじもじし始め驚愕の名を口にした。
「そのですね……戸神さんもよく知る人なんです」
「ふむ、分からん」
「えっと、僕が好きなのは……ミーシャさん…なんです」
あぁ、ミーシャ。へぇ……こいつぁたまげた。
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