帰宅のち日常

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「これでよし…っと」 「何だ、もういいのか?」 「ああ、これ代金な」 「おお!!太っ腹だな!!こんなことを話しただけなのにいいのか?」 「ああ…うん、うん、気にすんな。俺が言ったんだし。じゃあ俺行くから」 「またな戸神!!…さて、すまないが追加を――――――」 奴の追加注文を聞かずに店から出る。時刻は夕暮れ時、皆が帰宅するなか真っ赤に輝く太陽を見て、俺は頭を抱えながら帰っていく。しかしまあ―――――― 「俺の馬鹿っ!!」 路上で周りから奇っ怪な視線を向けられるが、それでも地団駄を踏まずにはいられない。 自分の浅慮が恨めしくて仕方ない。 何も情報が得られないなか、飯を食いに行く千夜を引き留めたまでは良かった。恋や愛に頓着がなく何でも話すと千夜が言ったまでも良かった。 俺のミスはあいつが財布を忘れ、対価(お礼)として昼飯?を奢ると言ったこと。 アバウト銀貨二枚、一品の値段に対して食いすぎなんてものじゃない。 まあしかしだ、大金を叩いただけあって調査資料はほぼ完成した。 王子様もまあ、この結果はどっちかと言えば喜んでくれるはず。願わくばあの遠慮しない阿呆が食った分を取り戻したい。 「ただいま……」 天心はまだ営業時間で、賑わう店内で料理を運んだミーシャが俺に向かってきた。 「おかえり…ってその手紙なに?」 視線の先は千夜の調査の手紙。目敏いな。 「いや、うん、何でもないから。じゃ」 詮索される前に階段を駆け上がる。後ろでミーシャの声が聞こえた気がしたが俺はそのまま部屋に入った。 ―――――― 「もう、落としたって言ったのに……けど、なんの手紙なのかな」 翔が逃げるように階段を上がる際、ポッケから落ちた手紙を拾い上げる。洋形の封筒で綺麗な模様の描かれてるそれは、まるでラブレターのようで。 (…………誰宛てなんだろ?) ミーシャは妙に気になり裏を見ようとするも、そこで叔父の声が。 「ミーシャ、できたぞ」 「あ……はーい」 仕事中だと忘れてたミーシャは懐に手紙を仕舞うと、出来上がった料理を手に仕事に意識を戻した。
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