帰宅のち日常

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―――――― 「くぅー……書けたぁー!!」 二時間ぐらいかかったか、王子様への調査結果も追加事項を入れて完成、ソフィアへのお礼の手紙も書けた。 そしてちょうどいいタイミングでフーが部屋に入ってきた。 「翔、ご飯できたって」 「あいよ、すぐ行く」 俺の返事を聞きフーは先に下に行く。俺も手紙を仕舞い階段を下りればいい匂いが。 「炒飯ですか」 「おお来たか、早く食べるぞ」 既に皆席に着いていて、店長さんに急かされ席に座る。 「よし、いただきます」 「「いただきます」」 店長さんの号令にいつものように挨拶、のはずが一人うわの空で。 「…………」 「…ミーシャ?」 「え、あ…うん、いただきます」 焦ったようにミーシャが笑顔を作り食べ始める。なんかあったのか? 「えっとね、そろそろソフィに会いに行こうと思ってるの」 飯も終わり際、唐突にフーが言う。 「まだ一週間も経ってないけどな。けどグッドタイミングだ」 本当にベストだ、頼むまでもなかった。それならと俺はフーにお使いを頼む。 「ついでに王子様とソフィアに手紙を……」 そこでフーではなく何故かミーシャが猫耳をピンッと立てビクッと震えた。 「え?どしたの?」 「な、何でもない、何でもないからっ」 ぶんぶんと首を振り否定するミーシャ。何この挙動、珍しい。 「まいいや、とにかく二人に届けてほしいんだが」 「私はいいよ。リンゴ五個で」 またもリンゴを要求するフー。先日十個ほど買ってやったのにここまでリンゴ好きだと逆に怖い。 「またか」 「正当な報酬だよ」 腰に手を当てさも当然のように言う。人の足元を見おって……別にいいけど。 「よし、それでいい。依頼成立だ。行くときは頼むぞ」 「任せて」 胸に手を当て自信満々に言うフー。これで何とかなりそうだが、今気になるのはその横。いつもならこの手の話題には色々と訊いてくるミーシャが、今日に限ってまったくもって黙っていた。 変と言えば変だが無理に訊くのはデリカシーがない……そっとしておこう。 そう結論付け、俺は残り少しの炒飯を食べていった。
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