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――――――
「……ん、ふぁー、眠い……」
小さな窓から差し込む朝日に目を覚ます。眠い、けどやらねばならぬことも多いから仕方ない。
のっそりと起き上がり、机の上の手紙を確認する。
「一つ、二つ……うん、うん?」
……あれ?何かおかしい。
「一つ、二つ…………」
背筋を何か冷たいものが走ったように体がゾワッとした。洒落にならん、一気に目が覚めた。
――――――フィッツ君から頼まれてた手紙がない。
急いで布団の下、机の中、部屋中隈なく探すが手紙の手の字も出てこない。
「そういや……」
帰ってきてから手紙を出した記憶がない。考えられるのは一つ、落とした、だ。
俺は一番やってはいけないことをしてしまったのでは……
「いや……まだだ!!」
乱暴に扉を開け階段を駆け下りる。この家は皆早起きで俺が大体一番遅く、下では皆でもう朝食の用意がされつつあった。
「あ、翔、おはよー」
元気よく手を上げるフーに俺は駆け寄り訊く。
「なあフー、手紙見なかったか手紙。ちょっと小綺麗な封筒の奴。知らないか?」
「うーん……見てないよ」
「店長さんは!?」
少しヒステリックな感じで叫ぶ俺に、朝食を作りながら店長さんは面倒臭そうに「知らんな」と一言。
これはやばい、ヤバいヤバイやばいヤバい何かテンパってきた――――
「ミーシャは!?綺麗な封筒なんだが知らないか!?」
イスに座り俯いているミーシャに尋ねると、ゆっくりと顔を上げる。その目元には少し隈ができていた。
「あ、えっと、大丈夫か?」
眠たそうな細目に少し怯んでしまう。ミーシャは無表情のまま俺を見て言う。
「へぇ、全然知らない……大事な手紙なの?」
ぶっきらぼうな言い方に、どこか余所余所しさを感じたが気にしてる間もなかった。
「とっても、凄く大事なものなんだよ。しかしここに無いとなると……ああもう!!ちょっと出てきます!!」
店を飛び出し、俺は昨日自分が通った道を訊き込みプラス、全力で探す。
頼む!!何所かにあってくれ!!―――――
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