5171人が本棚に入れています
本棚に追加
「それでは、また明日おねがいします!!」
「うむ、了解した」
笑顔で店を出て行ったフィッツ君。告白の日時は明日の昼過ぎ、場所はシアの場所と同じということで。
最初は本当のことを言えばあまり気が進まなかったのだが、ここからは全身全霊で取り組ませてもらう。それがせめてもの罪滅ぼしだから。この手紙も大切に扱わねば。
「良かったね……と言うべきかな?」
走ってくフィッツ君を眺めた後、そうマスターはにっこり笑うと、二種類のサンドイッチが乗った皿を出してきた。
「これは……」
「朝から走り回っていたんだ。その様子だと朝御飯も食べてないのだろう。食べると良い、私の奢りだ」
「マスター……」
……よし決めた、今日からこの人を心の師として仰いでこう。
この街の北から東にかけて、蛇のような形の大きな川が流れているのだが、どうやらそこが告白スポットのようで。
「ここから北に二キロほど歩いた場所にある小さな森を抜けた先。そこに一ヶ所、川の横に綺麗な開けた空間があってね。昔からそこで結ばれた二人はお互いを永遠に愛し合える。そういう言い伝えが残っているんだよ」
「それはまた…ロマンチックな話ですね」
日本にも似たような話はよくあったし、こういう話は世界共通ということか。地球に魔物はでないけど。
「私が知っているのはこれくらいだね。役に立ったかい?」
「それはもう、本当に有難うございます!!」
テーブルに頭をつけお礼を言うと、マスターは苦笑し、大袈裟だねと一言、食器を片づけていく。
……格好良いなぁホント。
「あ、そうだ。マスター、昨日シアが食べたクッキーありますか?」
忘れてはならぬ約束。マスターも聞いていたのか軽く頷き、カウンターの下から丸く大きなバスケットを取りだした。
「子供はたくさん食べるからね。これぐらいは必要だと思って作っておいたよ。けど、少し代金は弾むことになるよ」
俺が買うと分かっているからか、面白そうに笑うマスター。
この感じは団長さんに似ている。とても安心するこの感じは……
まったく、敵いませんな、流石心の師匠。
最初のコメントを投稿しよう!