帰宅のち日常

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―――――― 「ほら、今日はお兄さんからクッキーのプレゼントだぞ」 教会の奥のちびたちの集まる部屋、ドンとテーブルに置かれたバスケットに子供たちが群がっていく。 その中に、クッキーではなくこちらに向かってくる子供が一人。 「兄ちゃんっ」 シアである。嬉しそうに寄ってきたので取りあえず頭を撫でるが、この子の髪のサラサラ具合と言ったら言い様がないね。一パーセントでもいいから欲しいよ。 「ホントに来てくれた」 「約束は守る質なんでね。ほら、お前も食べてこい。一杯あるから」 「うんっ」 元気良く返事をし、シアも子供の群れに入っていった。そしてそれを見守っていた少女が声をかけてくる。 「翔さん、いつも有難うございます」 「いやさ、約束してたからね」 「翔さんが来るようになってみんな、特にシアなんて貴方を本当の兄のように慕っています。甘えられる相手が私しかいませんでしたから、それも関係しているのでしょうけど」 そう言い美味しそうにクッキーを食べる子供たちを見つめるアリシア。一週間も経ってないのにそこまで想われてるのは嬉しい限りだ。 「けど、授業があるのにシアを連れ出すのは感心しません」 シアめ、俺を売ったか。 「それは……うん、大丈夫、もうしないから」 俺がそう言うと何故かアリシアは怒ってた顔から一転、クスリと笑う。 「冗談です、シアは自分が悪いと言ってましたから。あの子がそう言ったんですからそうなんでしょう」 「なぜ俺は怒られたし」 「ちょっと、からかってみました」 楽しそうに笑うアリシアが意外であった。こういう表情を初めて見たからだが、考えてみれば何もおかしくない。16歳の女の子なんだからこれが普通なんだ。 そこで忘れてた物を思いだし、仕舞っておいた袋をアリシアに渡す。 「ああ、そうだ。はいこれ」 「これは……」 アリシアに渡したのは七枚のクッキーが入った小袋。 「マスターから…ああ、喫茶店の方ね」 一応付け足すと、アリシアはクスクスと笑う。 「私たちのマスターはクッキーなんて焼きませんからね」 「違いない」 マスターがクッキーを焼いてる姿を想像し、二人して笑い、ちび達を眺めた。
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