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一時間ほどちび達と遊んでやり、時間は昼を少し過ぎたあたり。
一緒に昼ご飯を食べた後、少し早目のお昼寝タイムに入ったため、ちび達がいないこの空間で本題に入る。
「アリシア」
「はい、何ですか?」
食器を洗っていたアリシアが振り向く。ミスは許されない、シアの為にも頑張らねば。
「そのだな――――――」
――――――
結果から言えば翔はうまくやれた。悪くとも及第点レベルではあった。しかし、頑張ったのだが相手が悪かった。
翔が帰った一室でアリシアがボーっと、心ここに非ずといった感じでクッキーの残りカスを眺めているところにシアが走り寄ってくる。
「アリシア姉ちゃん」
「…………」
「……姉ちゃん?」
「え……あら、シア、どうしたの?」
「姉ちゃんこそ……」
そう言われ笑顔で返したつもりが自分の表情が今、引きつっていることに気づく。
これでは駄目だと軽く深呼吸をし、改めてシアに話しかける。
「何でもないわ、それで、どうしたの?」
「今からみんなで遊びに行ってきていい?」
「ええ、いいわよ。けど危ないことしちゃだめよ」
何時ものように注意するとシアはニカッと笑い、胸に手を置き。
「大丈夫、俺がついてるから。じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
扉の先では子供たちの嬉しそうな声とドタバタと走っていく音。皆が見えなくなるまで笑顔で手を振り、そしてアリシアは机に突っ伏した。
思えば今日はこれから授業をする予定だったのだが、今のアリシアにその元気はなかった。
「なんで、翔さんが……」
アリシアが考えるのは先程の翔の言葉。自分をこの街で有名な告白スポットへ呼び出したその言葉。
無論、翔は呼び出すのが自分ではないと説明していた、暗に匂わせる程度にだが。
しかし、気が動転していたアリシアにその言葉は届いておらず、結果として彼女の中に残った言葉は戸神翔が告白スポットに自分を呼び出した。それだけだった。
翔の誤算はアリシアが早とちりであったこと。当の本人は現在、成功したと嬉々としているのだが、アリシアには知る由もなかった。
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