帰宅のち日常

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場所は移り変わり、アリシアはチャペルにいた。女神を象ったステンドグラスの前で片膝をつき、祈りを捧げる。 そしてちょうど一時間の後、静かに立ち上がると近くの長いすに座り、項垂れた。 「どうすれば……」 良い友達になれると思っていた。子供たちを孤児だからと何か言うわけでもなく、一緒に遊んでくれる、優しい少年。それが翔に対するアリシアの印象であった。 まあ翔はただ暇人なだけなのだが。 兎も角、これからも友人として、そうとしか考えていなかった。それが今回の事態、悩むのも仕方がなかった。 「告白なんて……私は……」 思い悩むアリシアの肩に、ふと手が置かれる。 驚きのあまり急いで振り返るとそこには見た目小学生の女性が一人。 「な、何だアリシア、一体どうした?」 マスター・スフィアである。 「マスター……」 たじろぎ一歩下がったものの、アリシアの苦しそうな表情を見てスフィアは真剣な表情になる。 「何があった、話してみろ」 「実は――――――」 「レイアに頼まれて来てみれば……まさかあいつが……馬鹿者め」 これまでの経緯を聞き舌打ち一つ、持ってきた籠を床に置き言う。 「嫌なら断ればいい。お前が気に病む必要はない」 スフィアは笑い飛ばそうとするが、そうもいかなかった。 首を横に振り、アリシアは虚ろな目をして残念そうに言う。 「マスターは男性から告白されたことがないからそう言えるんです。分かってないです、そんな簡単なものじゃないんです……」 「なっ……」 助言を与えたはずがこの仕打ち。スフィアは怒りかけたが、ふと思い留まる。言ったのはアリシアである。馬鹿なギルドの男どもではなく、聡明なアリシアである。 混乱でつい口走ってしまったとしても、つまりは本音であり事実。 (私は…駄目な女だったのか……?) 思い返せば告白どころか、子供扱いしかされてこなかった今日これまで。 女性として見られたこともない、恋も知らない、結婚適齢期間近の、そんな23歳。 身長はもう伸びない20代。 (私は……私は…………) 10分後、礼拝堂の一角では、成人の女性と一人の少女が暗い空気を漂わせながら、並んで頭を垂れていた。
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