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「おいおい、なんだよこの空気は。暗い、暗すぎる!!」
怒鳴り声とともに、地球を照らす太陽の如き赤い髪を持つ成人が教会に入ってきた。
「レイアに言われて来たみれば…まったく……あそこか」
眠りから覚めたリックである。リックはどんよりとした空気の発生源まで歩いていく。
「おいっ、何し…て……」
そして思わずたじろいだ。
彼の前にはシスター服が礼服にさえ見えるほど暗雲漂うアリシアと、暗鬱な表情でぶつぶつとネガティブな言葉を発し続けるスフィアがいた。
――――――帰ろうか。そんな考えがリックの脳裏を過るが仕方なく声をかける。
「おい、どうした二人とも。生きてんのか」
その言葉に反応したのはアリシアだけであった。
「リックさん……」
あまりに暗い顔をしてるアリシアに驚きながらも、リックは手を差し伸べる。
「よくわからんが何かあったなら聞いてやる。それよりは力になれるぞ」
瞬間、スフィアの周りにどす黒いものが立ち籠める。二人はなるべく離れた場所まで移動した。
「ほぉ、翔っちがねぇ。いいセンスしてるなあいつ」
「ふざけないでくださいよ……私、本気で悩んでいるんです……」
未だに暗いアリシアに、リックは思ったことを言う。
「なあアリシア、お前は翔っちのことが好きか嫌いか、どっちだ?」
「え!?……嫌いでは…ありません」
子供好きの人はいい人、そんな考えで。
「ならいいじゃねぇか」
その答えにリックは笑う。
「関係が壊れるのが嫌ってんなら付き合ってみればいい。嫌いじゃねぇんだろ?なら案外、上手くいくもんだぜ」
「リックさん……」
「俺はフィアと違って恋愛経験豊富だからな。信じろ」
ポンと、自分の頭に手を置くリックに訊いてみる。
「…最近彼女さんと別れたのは何時ですか?」
「先月だな」
隠す素振りもないリックにアリシアは笑うしかなかった。翔と付き合う姿は想像できない。けど、そこから始めるのも良いのかもしれない。
「ま、俺が言えるのはここまでだな。あとは自分で決めることだ」
立ち上がり伸びをするリックにアリシアは頭を下げる。
「はい、有難うです、リックさん」
「気にすんな、仲間だろ。じゃ、フィアのことは頼んだぞ。凍らされたくねぇからな」
「はい、任せてください」
笑いながら去るリックを見送りその後、彼女がスフィアを励ますのに半日を費やしたのはまた別の話。
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