帰宅のち日常

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「んあ、リックじゃないか?」 レイアとエアリィが娘談義に華を咲かせ始めて30分が過ぎたあたり。 甘酸っぱい青春?を思い出しながら、昼の街を歩くハンクの視線の先には人の中に真っ赤な髪。ちょうどいいところにと先ほどの話をしようとハンクが呼ぶ。 「おい、リック」 呼びかけの声に気づきリックが達成感を帯びた笑顔で向かってくる。 「今な、アリシアに恋愛相談されてたんだよ」 後輩を助けれてか上機嫌のリック。 「奇遇だな、俺もミーシャに恋の道ってやつを説いてきたところだ」 同じくハンクも誇らしげに言い、そして二人は首を傾げる。 「ミーシャが?今度は誰だよ」 またフラれる奴が出るなと笑うリックにハンクはにやりと笑う。 「意外な奴だぞ」 「へー、誰さ」 勿体ぶるハンクに対しそこまで興味がないのか、リックは欠伸ながらに耳を傾ける。 「戸神だ」 「へー、翔っちがねぇ……はぁっ!?」 驚愕。 「どうだ、驚いたろ?」 意表を突けたと笑うハンクの思うそれとはまったく別の驚き。リックは言葉を吟味し、引きつった笑みで言う。 「待てよ、翔っちはアリシアに告白すんだろ」 「あ?何言ってんだ。俺はさっきレイアと一緒に話してきたんだ。戸神が告白すんのはミーシャだ」 食い違う意見。なんだどうしたと周りに人が集まり始めるも、譲れぬ何かにヒートアップし始めた二人は意見をぶつける。 「いい加減年が来てんだろ。大方別の会話でもしてたんだろ。絶対にアリシアだ」 「馬鹿言うな。お前より絶対的に冷静沈着な俺がそんなミスするか。ミーシャに間違いない」 「アリシアだ」 「ミーシャだ」 「アリシア」 「ミーシャ」 どうしても退かぬ両者。リックは数秒空を仰ぎ、息を大きく吸うと怒鳴った。 「……アリシアだって言ってんだろ!!」 「お前も聞き訳がないな!!ミーシャだと何回言えば分かる!!」 相談を受けただけの二人が何を興奮してか声を荒げていく。不毛な争いが続く中、岡持ちを片手に野次馬根性でのっそりと顔を出した少年が声を上げた。 「ハンクさん、リックさん。こんなとこで何してるんすか?」 全ての元凶。微塵も悪くはないのだが、元凶である戸神翔が姿を現した。
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