帰宅のち日常

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さて整理しよう。目の前には大の大人が二人、喰いかからんばかりの形相で睨み合っている。 一触即発の状態である、がそこから発展することはありえない。 「何があったかは知らないがここは喫茶店だ。争いは許さないからな」 マスターがコップを拭きつつ眼力で二人を諌める。渋々と言った感じで顔を逸らす二人。 だがおじさんが一人、俺たちが来た瞬間そそくさと逃げてしまったのがどうにも。 あのままではいけないと思い連れてきてしまったが……マスターごめんなさい。 「えっと、二人は何を争ってたんすか?」 なるべく、なるべく穏便に済まそうと会話を切り出すとリックさんが俺にズイッと顔を近づけ 「翔っち、お前はアリシアに告白するんだよな?そうだよな?」 「え、あの」 話を理解できない俺に返答する間も与えず、今度はハンクさんがリックさんを押し退け言う。 「ミーシャだろ、な。この馬鹿に本当の事を言ってやれ、な」 二人の薄ら笑いが気持ち悪い。そしていつも通り情報ダダ漏れ。しかしどこで手に入れたか知らないが情報に差異が生じてるぞ。 俺は告白なんぞしないのに、言ってやらねば。期待と不安が入り混じった表情の二人に俺は静かに告げる。 「俺はどちらにも告白なんてしません」 「「は?」」 何言ってんだこいつみたいな顔をされた。 「だから、どこで耳にしたか知りませんけどアリシアに告白するのはシアで、ミーシャにはフィッツ君です。そういう依頼だったんですから」 そう言い切ると二人は疑問を浮かべたまま数秒固まり、ゆっくり立ち上がると手でTの字を作り素早く部屋の隅に移動し屈み込んだ。 どういうことだ、いや俺にも……などと所々会話が漏れてくるのを聞き数分。 良しっと一声、二人はガシッと肩を組み引いてしまうぐらいの笑顔で席に戻ってきた。 「いやーごめんな翔っち。俺たち勘違いしてたみたいだ」とリックさん。 「少し食い違いがあったみたいだ。変な質問して悪かったな」とハンクさん。 何を話し込んでたか知らないが納得してくれたようだ。いやぁ、よかったよかった。
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