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――――――
「すっかり遅くなったな」
日は既に落ち、夕飯の時間も過ぎた夜に翔は天心へと戻っていた。
明日の段取りをシアに説明したり、フィッツを捜し最終確認したりと忙しい一日だった。
「ただいま」
中に入ると居たのは店の片づけをしている店長だけだった。
「店長さん、ミーシャは?」
「風呂に入ってる」
短文の返答にしめたと翔は喜んだ。
すぐに階段を上がりミーシャの部屋の前に立ちポケットから手紙を取り出す。
「ミーシャなら絶対気づくだろ。直接渡すより……」
その場にしゃがみ込むとドアの下の隙間に手紙を挟む。読めばミーシャも行かないことはないはず、あとで確認すれば大丈夫だろうと高を括り、翔は自室に入った。
「あ、翔。手紙ってどれを持ってけばいいの?」
部屋の机にはフレリアが立っていた。うきうきしたその表情に翔は訊く。
「お、今から行くのか?もう夜遅いぞ」
親心然り、翔の心配を余所にフレリアは言う。
「夜の方が見つかりにくいし。何より今日は星が綺麗だから」
夜のお散歩だよ、と楽しげに言うフレリアを止める気も起きず翔は二通の封筒を渡した。
「それじゃこれをソフィアと王子様に頼む」
「りょーかい!!」
「気を付けて行けよ」
「うん、行ってくるね」
部屋を出て廊下の窓から飛び出ようとした時だった。フレリアの視界の隅にピンク色の物体が入ってきた。
「……なんだろ?」
気になり降り立って見てみるとドアに挟まった封筒が一通。自分の手元にも封筒が二通。
(…………翔が落としたのかな?)
手紙が二通とは聞いてなかったフレリアはそう考えた。何かの拍子で落としてしまったのではないかと。
これを持ってけば褒めてもらえるかもしれない、報酬が、リンゴが増える。希望的観測を繰り広げ、フレリアは勢いよくドアの下の封筒を引っ張り出す。
「よしっ、行ってきまーす」
意気揚々と、3つの封筒を抱えフレリアは窓から旅立った。
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