帰宅のち日常

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―――――― 人間、寝る前に特定の時間に起きたいと強く思い寝ると、案外起きれるもので。 ぱっと目が覚め無言で起き上がる。窓から外を見れば日はまだ出て間もない時だった。 「……ふぅ、うしっ」 頬を叩き完全に目を覚まさせる。俺が告白するわけではないのにこの緊張感。 俺にできるのは手伝いだけ、気合を入れてこう。 服を着替え廊下に出て再度確認すると何処にも手紙はなかった。読んではくれたのだろう。 階段を下りてくと一階から物音が聞こえた。こんなに早くは無い筈だが、店長さんかと思ったがそうではなかった。 「ミーシャ……早いな」 ミーシャは入口に静かに立っていた。思えば昨日はろくに会話もしてない気がする。 「隈なくなったな、寝れたのか?」 階段を下りながら訊くとミーシャも近づいてきて。 「おかげ様でね」 テーブルを一つ挟んだ距離で、微笑みながら言うミーシャから、昨日の朝の余所余所しさは見られなかった。 おかげ様が何かは分からないが解決したのか。 少しの静寂、そしてミーシャは決心したような力強い瞳を俺に向ける。 「翔……ここで言うのは違うかもしれない。けど、聞いて」 「えっと、何を?」 白々しいか、手紙の事に決まってる。両手を胸に当てミーシャは言う。 「……私、手紙嬉しかったよ。けど、その気持ちに答えることはできない」 「…………」 決して曲がることはないだろう、芯の通った言葉に俺は俯くしかなかった。 成功しないと分かりながらフィッツ君を連れてくなんて、彼を道化にしてるようなものだ。 けど、だからといって二人をあの場に立たせないわけにはいかない。それが依頼なんだから。全身全霊で取り組むと決めたのだから。 申し訳なさそうに目を逸らしているミーシャに言う。 「ミーシャの気持ちは分かった。けどあの場には来てほしい。もし気持ちが変わらないとしてもあの場で、そこでもう一度、今の言葉を言ってほしい。お願いだ」 「翔……」 辛そうな、困惑した表情のミーシャ。それはそうだろう、俺に伝えてほしくて言ったのだろうから。 「ごめん、けどお願いだ。……俺もう行くから」 「翔っ!!」 呼び止めようと叫ぶミーシャを無視し店を出て走る。卑怯なやり口だ。けどこれでミーシャは来てくれるはずだ。 考えることを振り払うように俺はギルドへと走った。
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