帰宅のち日常

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「兄ちゃん、大丈夫?」 艶やかな青髪を垂らし、不安を顔に出して覗き込むシアを呼ぶ。 「問題なし、シアも降りてきてみろ」 「う、うん……」 ぴょんと跳び、物音立てずシアは華麗に着地を決めて見せた。それを見ていたリックさんが感心したように言う。 「ほぉ、もう身体強化ができるのか」 「えっと、一応……」 頬を赤くし照れながら言うシア。え、シアって魔力持ってたの?俺知らないんだけど。 「将来有望だな。ギルドに入る気はあるのか?」 「あと二年ぐらい経ったら入っていいって……」 「そうか、頑張れよ」 「うん!!」 俺を挟んで会話が弾んでいる。ちょっぴり疎外感。手持無沙汰になり地面に目を向けると、股らへんの土がボコッと盛り上がる。 「ぬおっ!?」 飛び退こうにもそんな広さはなく逃げれない。そうしてる間にも地面はどんどん高くなっていく。 「リックさん!!モグラですモグラ!!」 やばい、モグラとか初めて見る!!テンションあがる!!とか思ってたが地面から顔を出したのは 「よお」 おじさんの生首だった。 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ―――!?」 穴に叫び声が反響し耳鳴りが起こるも叫び続ける俺に生首は睨みを利かせる。 「喧しい、誰がモグラだ。お前は年長者を敬え」 「ぁぁぁぁ…………ぁれ?は、ハンクさん?」 「そうだ馬鹿たれ。横の二人を見てみろ。鼓膜をやられかけてるぞ」 叫ぶのをやめシアを見ると痛そうに耳を抑えている。 「シ、シア!?大丈夫か!?」 「へ、へいき……」 聴こえてるか……セーフか。あぶない、怪我させるところだった。 「なあ翔っち、俺も相当やばいんだけど。俺の心配は?」 「お前の心配は必要ないとよ。よし、お前らちょっくら場所を開けろ」 言葉に従い場所を開けると、地面から両手を突きだし勢いよく飛び出てきた。 「嗚呼、肩が凝るなこれは」 瞬時に出てきたはずの穴が元通りになり、ドカッとその場に座り肩を鳴らすハンクさん。 「な、何でそんなとこから……」 俺の問いに初老間近のおじさんが子供みたいに笑い言う。 「何でって、面白いじゃないか」 こっちは寿命が縮んだんですが。
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