帰宅のち日常

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森の中を一人の少女が歩いている。普段と変わらぬシスター服、首から下げた十字架のネックレス。違うのは浮かない表情だけ。 アリシアは悩んでいた。前日まで了解の返事をしてもいいかもしれないと考えていたが、当日の朝になり、子供たちの顔を見て迷いが生じていた。 恋愛に現を抜かす事が子供たちへの裏切りになるのではと。この年頃の女の子は異性と付き合っていても何ら不思議ではない。けど自分は同じ境遇の子供を育てていくと決めた身。 やはり間違っているのではと。付き合う、断る、その二択の中を彷徨いながら、アリシアは森で唯一の光が照らす空間に足を踏み入れた。 「っ…………」 日光の眩しさに腕で光を遮る。久しく訪れたその場所は相も変わらず人工っぽく。 まだ翔さんは来ていない、確認を済ませ深呼吸をしようとしたとき左の茂みから、がさがさと掻き分ける音。 「だ、誰ですか?」 緊張に声が強張るアリシア。聞かずとも分かっていた――――――筈だった。 そこから出てきた人物にアリシアは驚愕した。青い髪に青の瞳、違えるわけがない。 「シア……どうして……?」 事態についていけないなか、シアがアリシアの正面に立つ。 そのあまり見ない真剣な表情にアリシアは戸惑い訊く。 「待ってシア、だって……今日は翔さんが……」 「兄ちゃんには手伝ってもらったんだ」 「え、待って、だって、そんな……」 思考が止まり、片手で顔を抑える。目の前にはシアが立っている、翔ではない。それが事実。 「ごめんなさいシア、少し、少しだけ待ってね……」 「う、うん……」 子供であるシアを問い質すわけにもいかない。アリシアは大きく深呼吸をし心を落ち着かせる。誰であろうと此処は告白の場、それはシアも然り。最後にもう一度深呼吸をしてシアを見る。 「ごめんなさい、もう大丈夫よ」 一度は取り乱していたが、何時ものアリシアに戻ったことを確認してシアは高鳴る鼓動のなか、息を大きく吸い想いを伝える。 「俺、アリシア姉ちゃんのことが好きなんだ!!」
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