帰宅のち日常

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―――――― 穴の中で全てを聞いていた二人の大人が立ち上がる。リックとハンクの中では面白い流れが発生し、勘違いの果てに起こる喜劇により楽しめると思っていた。 だが蓋を開けてみれば後輩二人の仲が引き裂かれてしまいそうになる始末。流石に笑えないと穴を飛び出し、呆然と佇む翔へと向かっていった。 「翔っち……」 リックの声に翔は死んだような顔で振り返る。 「リックさん……俺は何をしてしまったんでしょう……」 その表情はフラれた人間のするそれと同じであった。何とも気まずい雰囲気にハンクは話を切り出す。 「そう言えばフィッツを連れてくるんだったな。お前はきつそうだな。俺が連れてきてやろう。だからお前ら二人で待ってろ。じゃあな」 「ちょ、おい、おっさん―――」 リックが呼び止める間もなくハンクは超スピードで彼方へと消えていった。 「何だあの棒読みは……下手糞かっての」 悪態をつくリック。その後ろでは翔がしょんぼりと頭を垂らす。 「すみません…なんか俺のせいで…けど俺にも何が何だか分かんないです……」 暗いオーラを発し、どんどん沈んでいく翔。こんなことなら本当の事を言ってやろうかとも思ったが、もう一人残っていることだし様子を見ようとリックは決める。 悲劇を繰り返そうとも喜劇を望むその姿勢は、呆れを超えた関心の域である。 「くよくよすんなって。アリシアだって人間だ。きっと虫の居所が悪かったとかそんなとこだろうって。明日になれば機嫌だって直ってるさ」 もちろん、リックは直るとは到底思ってなかったが翔の表情に少し光が戻る。 「そうですかね……」 救われたような顔をする翔にリックは爽やかな笑顔を向ける。 「おう、間違いない。お詫びの品でも持っていけばアリシアだって許してくれるさ。俺が翔っちに良い店教えてやっから」 「……お願いします」 翔は、それはそれは丁寧に頭を下げた。 (らしくないなぁ、まあひとまずは……ってところかねぇ) リックは小さくため息を吐いた。 そのまま会話をすることなく、二人はハンクとフィッツを待った。
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