帰宅のち日常

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「――――――というわけなんです」 「…………」 フィッツから事の次第を聞きミーシャは顔を伏せ、何も言えないでいた。 結局、全部自分の勘違いだった。 (私があんなに悩んだのって……一体……何だったんだろう……) 勝手に勘違いしてあたふたして、寝れないくらい馬鹿みたいに悩んで、翔に冷たく当たってしまって、関係ない人に相談して馬鹿みたいに真剣に返事を考えて、馬鹿みたいに………… 顔が熱くなっていくのが容易に理解できた。恥ずかしい、その思いがミーシャを埋め尽くしていった。思い返すだけで沸騰したように熱くなっている自分がいた。 翔は何も悪くなかった、そうここまでは。ミーシャが気になったのは名前の入ったラブレターを自分は見ていないということ。つまり翔が忘れて渡していない、そう結論付けた。 ミーシャは翔が隠れている茂みの方に顔を動かし、語気を強め聞こえるように言う。 「翔、あとで話があるから」 ミーシャ自身分かっていた。こんなのは身勝手な責任転嫁でしかないことを。だが自分が悪いと分かっていてもそうしないではいられなかった。 その声に翔が驚き震え、その間にモグラに額を一突きされたことをミーシャは知らない。 リックが必死に笑いを耐えてることも知らない。 それだけ言うとミーシャは向き直りフィッツを見る。 どんな形であれこの場に来たからには告白を聞かねばならない。気持ちを整理し、フィッツを安心させるようミーシャは優しく笑う。 「ごめんね、もう大丈夫だから」
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