帰宅のち日常

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「聞いてたんだよね……」 「一応……」 「そっか……」 会話が続かない。二人してさっきのフィッツ君の言葉には触れようとしないからなのだが、それはどうにも地雷な気がして。 ミーシャも複雑そうな顔をしながら会話を切り出す。 「私、あんな風に告白されたの初めてだよ。びっくりしちゃった」 俺もびっくりしてる最中です。気の利いた返しが考え付かない中、ミーシャは苦笑しながら言う。 「翔を怒ろうかと思ってたけど、なんかその気もなくなっちゃったなぁ」 「なぜ俺が怒られる方向に?」 「自分の胸に手を当てて考えて」 言われた通りにして考えてみるが理由が一向に思いつかない。 「分からん」 「……じゃあ考える時間をあげるよ。少し、目を瞑って」 言われるがままに目を瞑る。するとミーシャが近づく音がし次の瞬間 「ぐおっ!?」 体の四ヶ所に鋭い痛みが走ったあと、手足が痺れて動かなくなった。この感覚は……吊った!? 「ミ、ミーシャさん、これはいったい」 目を閉じてる間に後ろに立っていたミーシャ。首だけ何とか動かし訊くと清々しいぐらいにっこりと笑って 「神経と筋肉を刺激する人体のツボを圧したの。四、五時間で解けるから。ゆっくり考えてね」 「え、ちょ」 何すかその奥義みたいな技は。 「じゃあね、夕飯は用意しとくから」 こんな気まずい空気でも何故か笑顔で。俺の言葉が聞こえてないように、軽やかなステップで去っていくミーシャ。止まる気配は一切なし。 「マジっすか……」 人がいなくなった告白の場で俺はただ一人立ち続けなければならないこの現状。 「俺が何をした……」 今日はどうにも訳が分からない日だ、畜生。
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