帰宅のち日常

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―――――― 三十分ほど走り回りフィッツを街に送った後。ハンクが気になりやって来たリックの目の前には手足を岩石により拘束されたカマキリ。 だが体は紫色、体長はおおよそ五、六メートルはあるだろう巨大さは異常の一言。 それはこの界隈ではいるはずのないクラスの魔物だった。 「良い所に来たな、こいつを燃やしてくれ」 大きめの石に腰を掛け笑うハンクにリックは魔物を眺めながら言う。 「何だこいつ。昔、他大陸にいたやつとそっくりだな」 「そっくりじゃない、同じだ」 「……まじかよ」 「間違いない、理由は分からんがな。これはマスターに報告する必要があるぞ」 面倒臭いと言わんばかりに息を吐くハンク。だがリックは言う。 「いや、その必要はねぇみたいだ」 「んあ?」 疑問を口に顔を上げたハンクの前には見た目少女と色気漂う女性が立っていた。 「……これは早い到着だな。こいつをどうみるよ、マスター?」 無言ですたすたと歩いていき魔物に触れるスフィア。そして見た目少女はふんっと露骨に嫌そうな顔をして言う。 「これは召喚というより、ここに落とされた。それだけだな」 「……こんなデカブツを連れてきたってか。面倒くせぇ ことする奴がいたもんだ」 はっと笑うリックにレイアは同意の声を上げる。 「本当、嫌になるくらいの魔力の持ち主がいるものね」 その言葉に皆押し黙る。この四人からしてもこれは狂った魔力の所業だった。 「……この件については私が調べておく。私は先に帰る、こいつの処理は任せたぞ。帰るぞ、レイア」 「はーい、じゃあ任せたわよ」 レイアがにっこりと笑うとその場に強い風が吹く。そして風が止むころには二人は何処にもいなかった。 「やれやれ、人使いの荒いマスターだ。ほれリック、やれ」 「おっさんも大概だぜ。ま、仕方ねぇか。『獄球』」 リックの周りに幾つもの巨大な火の玉が出現した。それは彼が右腕を魔物に向けた瞬間、高速で魔物に放たれていく。 当たった個所から爆音と叫び声とともに燃えていく魔物、それを見計らいハンクが地面を渾身の力で殴る。 「じゃあな」 轟音と共に地面が割れ、魔物は燃え盛りながら暗闇へと落ちていった。
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