日常のち誕生日

5/50
前へ
/605ページ
次へ
「宛てとは?」 「二か月ほど前ですけど、街から西の山を越えたその先の山で極彩鳥を見た人がいるらしいんです」 「……極彩鳥って?」 知らぬ名に訊き返すと、アリシアは満面の笑みを浮かべ饒舌に語りだした。 「極彩鳥というのはですね、その名の通り虹色の鮮やかな羽に特徴的な鶏冠を持つ高位鳥の一種なのですけど。あ、高位鳥は分かりますか?」 「一応は」 高位鳥、この世界で確認された鳥類の中で高い知能と魔力を持つ鳥をそう呼んでいるらしい。 かつてはその魔力目当てに乱獲され、高位鳥に分類されてる鳥たちはこぞって絶滅の危機に晒された。だがギルド間の協定が二百年ほど前に立案され、それ以降密猟した者は厳しい罰が与えられるようになった。 しかしそれでも減少傾向に歯止めが利かずその個体数は限りなく少ない伝説の鳥。 「それでですね、高位鳥に分類される賢い極彩鳥ですが瞳がとてもキュートなんです。目尻の下がった可愛い垂れ目で、その何を考えてるか分からない感じがもう最高なんですよ!!それに受けた恩はきっちりと返す律儀全い鳥なんです!!その身に纏う美しい羽を抜き感謝の印として渡す……その義を重んじる心。素晴らしいと思いませんか!?」 「う、うん……そうですね……」 アリシアが幻獣マニアだったとは知らなかった。こんなテンションの高いアリシアを見る日が来るとは…… しかし垂れ目で律儀で虹色の鳥か、そんな鳥見たことなんて……………………あるなぁ。 「どうしました?」 「いや、別に。それよりアリシア、虹ど…じゃなくて極彩鳥についてやけに詳しいな」 この世界に写真は存在しない、あるのは文献だけ。だがアリシアの話は実際に見たことがある人の話振りだった。 するとアリシアは目を閉じると、昔を懐かしむように話し出した。 「……極彩鳥は私にとって特別な存在なんです。私が小さい頃です……自分が孤児だと知って何もする気がなくなって腐っていた時でした。もう亡くなりましたがシスターが……私のお母さんがある場所に連れてってくれたんです。そこはですね――――――」
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5171人が本棚に入れています
本棚に追加