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フィッツ君の重要ではない、取留めのない話を聞き流し彼の顔を見る。その表情にやはり憎しみのようなものは感じられない。友達と話してるだけ、そんな普通な表情だ。
「?……どうしました?」
「ん、今日は暑いなぁと」
「そうですか?僕はこれぐらいがちょうどいいです」
「おぉふ…そっかぁ……」
確かに汗一つかいてなく、日に当たるのを楽しんでるように晴れやかな笑顔だ。そして肌は焼けてなく白いまま。俺もきついのに……この子もこの子で特殊だな。
「それで昨日は――――――」
未だにこの子は俺を尊敬してると言っている。あの日の翌々日に出会い、恋敵であった俺に何の迷いもなく「ありがとうございました」と、「これからもよろしくお願いします」と。
恨まれてもおかしくない俺に笑顔で、それが理解できなかった。いや、今でも理解していないかね。
何時か闇討ちでもされるのではと疑心暗鬼になった時もあったがそんなことは起こる訳もなく、街で出会えば嬉しそうに笑いながら俺に近寄ってくる、そんな日常。
「わっかんねぇ……」
「え?そんな難しい話をしてたつもりは……」
「ああ、違う違う。少し考え事をね」
そう答えるとフィッツ君は太陽に視線を向けて数秒、俺に向き直り
「えっと……ミーシャさんの誕生日の事ですか?」
的確に言い当ててきた。
「何故分かるし」
そう聞き返すとフィッツ君は屈託のない笑顔で。
「何となくですよ。それで良ければですけど……何を贈るのか訊いてもいいですか?」
一瞬言おうか迷うも、別にいいかと狙いの品を教える。
「極彩鳥の羽をね、まだ手に入れてはないけ…ど……?」
そう言い横を見るとフィッツ君の姿がなく、振り返ると数歩後ろで呆けた顔で立ち止まっていた。
何事かと近寄ろうとすると先にフィッツ君が走り寄ってきて、俺の手を胸の前でガシッと掴むと目を輝かせ言う。
「戸神さんはやっぱり凄いです!!極彩鳥の羽なんて幻の一品をプレゼントするなんて!!」
その興奮具合と言ったら中々のもので。
極彩鳥はこの街では有名らしい、これは思ったより難しいミッションなのかもしれんぞ……
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