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極彩鳥についてフィッツ君も知識があったようで分かれ道の去り際の時に言う。
「もう知ってるかもしれませんが極彩鳥はお肉が好きって本に書いてありました。探すうえで持っていれば役に立つかもしれません」
ほう、これは有益な情報だ。
「いや、知らなかったよ。ありがとう」
お礼の言葉にフィッツ君は照れたように笑う。
「こ、このぐらいでお礼の言葉なんていいですよ。それじゃあ頑張ってくださいね」
慌てたように走り去っていくフィッツ君。この中を走るなんて元気だな。
俺なんて汗だっくだくなのに……
フィッツ君がもう一度角を曲がり見えなくなったところで近くの家の影に入り膝に手を着く。
「焼けるかと思った……ん?」
一休みしていると前の家から婦人が出てきた。片手に桶を持ち水撒きを始めるも、撒かれた所から蒸発し元の色へと戻っていく。仕舞いにはうんざりと言った顔で桶の水をぶちまけ家へと戻っていった。
「…………」
異常すぎる暑さに辟易してしまう。ふと跳ねていた一本の髪を弄れば、触った場所からポキリと折れ手の上に虚しく萎びていた。空を見れば太陽は是でもかと街に熱を降り注いでいて。
「…………夕方買い物に行くか」
死んだ髪を地面に落とし、影を歩きつつ天心へと家路についた。
――――――
時刻は夜。この時間帯になると多少は暑さも和らいでいて。
だが天心に関しては昼間の方が涼しいのである。この世界には日本でいうクーラーの代わりに魔石冷却器なるものが存在する。
それは魔力を送り込むことで一定時間冷気を発するとの事だが原理はさっぱり分からない。
まあクーラーの原理も知らないのだけども。
「――――――と言うわけで明日から数日登山をしてきます」
夕飯の席で俺はプレゼント云々の事情を隠しつつそう宣言したが、家族の反応は酷いものだった。
「脱水症状で倒れるのは目に見えてるな。時期を変えろ、今行っても紅葉も何もないぞ。あとクエストを受けないなら麻雀なんてしてないで店を手伝え」とお怒り気味の店長。
「翔なら大丈夫かもしれないけど……自殺しに行く様なものだよ。あと麻雀?だったかな?兎も角、賭け事は駄目人間への一歩だよ」と俺を諌めるミーシャ。
「翔…………」食を止め、可哀想なものを見る目で俺を見つめるフー。
「…………」何も言い返せない俺。
縮こまりなう。
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