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――――――
「よいしょっ…と。さて、い「こんな時間に何処に行く」!!?」
夕方に買っておいた肉をリュックに詰め、いざ出発しようとした俺の前に覇気を放つ一人の仁王、もとい店長。
時間にすれば深夜アニメが始まる時刻。置手紙も残し、忍者の如く音もなく旅立とうとしたが蓋を開けてみればこの体たらく。
「何でわかったんですか……?」
偶然起きた、そんな訳はない。俺の問いに店長は当たり前だと一言。
「口では反省したようなことを言ってたが目が諦めてなかったからな」
なんて観察眼だ……だが。そして俺は、けど行きますと言おうとするも店長が先に喋る。
「まあ待て、止める気はない」
そう言うと店長は近くの椅子に腰を下ろす。そして何処からか葉巻を取り出し指に火を灯し吸い始めた。
「ミーシャは体に悪いと怒るからな。夜中にしか吸えないときた。まったく、誰に似たのか」
感慨深げに遠くを眺め一息、月明かりに照らされうっすら立ち昇る白い煙。
「大方、ミーシャの誕生日の為に目撃された極彩鳥を探しに行くってところか」
訂正の必要がない完璧な回答だ。
「……この街は隠し事は不可能ですね」
秘密も何もあったもんじゃない。諦めの言葉に店長は声を抑えて笑う。
「そうだな。一線から引いても情報ってのは彼方此方から入ってくるもんさ。特にこの街はな」
それだけ言うと店長は吸い始めて間もない葉巻を灰皿に押し付け立ち上がった。
「翔、分かってるだろうが期限は三日後の夜までだ。見つからなくても絶対にそれまでには帰ってこい。いいな」
イエス以外の言葉は受け付けないといった迫力に俺は頷く。
「御意に」
俺の言葉を信用してくれたのか、店長は軽く笑うと階段へと向かい欠伸ながらに言う。
「騒がしいのが二人もいないとミーシャも寂しがるかもな」
「二人?え、店ちょ…う……」
訊きそびれ一人残され、俺に背後霊でも憑いてるのかと思ったがそんなことはなかった。
準備も終わり店の戸を開けると、綺麗な金髪の髪が目に入った。普段のツインテールではなく下ろした髪型とは珍しい。そいつは髪を靡かせながら振り返ると声高らかに言った。
「私もミーシャの為に一緒に探しに行ってあげる」
……そろそろ情報源を知りたいもんだ。
「……まあいいか。うしっ、行くか」
「うんっ」
意気揚々と、店に別れを告げ俺たちは西の山へと向かった。
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