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街から目的地である山へはおよそ三キロ。よってのんびり向かえば二時間弱は必要で。
「着いたな」
「着いたね」
麓から山を眺める。此処の何処かに奴がいる、不安事項があるとすればこの山に奴が留まっているのか、そしてあと一つ。
「翔、この二人どうしよっか?」
フーの指差す先にはぐったりと地に伏す、闇夜に紛れるピッチピチの黒服を着た二十代半ばほどの男が二人。
顔が瓜二つだから双子とフーが命名した。
辿り着く直前、何処からともなく「妖精ヒャッハー!!」という奇声とともに奇襲を仕掛けてきたのだが、そこはフーの敵ではなかった。
俺がもう一人の攻撃(鈍器)をもろに喰らってる中、するりと華麗に避けると敵の腹めがけて渾身の体当たりをかまし気絶させたのだ。
そして俺のヘルプ!!の声に大きくうねる光の軌道を見せ二人目の意識も昏倒させたのが五分前。野ざらしにするわけにもいかずわざわざ連れてきたのだが。
「ここに…しょっ…と。置いとけばいいだろ」
近くの太い木の枝に投げ置く。何者か分からんが、せめて極彩鳥を探し終えるまで寝ててほしいもんだ。
「さて、行くか」
「りょーかいっ」
この時、俺はこれから地獄が待ってるなど想像もしなかった……
~~~~~~
一日目
「翔、だらしないよ……」
「俺から言わせれば…何でお前そんな元気なんだよ……」
日が昇るまで仮眠を取り、いざ山に足を踏み入れ四時間が経過した。だが極彩鳥の極の字の手掛りも掴めず、今は滝のように流した汗を取り戻すため休憩中。
「水の音がする」とのフーの言葉を頼りに獣道を抜けた先、小さな清冽な泉がありそこに腰を下ろしたのだ。
「これじゃ明後日までに見つからないよ」
「分かってるさ……けど少し休ませてくれ」
ふぅとあからさまに溜息を吐くフー。情けないのは重々承知だが店長やミーシャが言ってた通りこれはきつい。
この山はさながら熱帯林の如く、高温多湿、虫の宝庫。俺は舐めていた、夏の山を軽く見ていた……
「もういい、私だけで探してくるから」
一向に項垂れて動かない俺に呆れたのか、そう言い捨てフーは一人で山の中に消えていった。
「俺もあと五分、五分したらまた探そう……」
そう自分に言い聞かせるが、明日やろうは馬鹿野郎。それは俺も例外ではなく結局、微脱水症になっていた俺は夜まで寝入ってしまった。
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