日常のち誕生日

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―――――― 「くしゅんっ……誰か私の噂をしてるのですかね?」 「そうじゃないですかねぇ」 「……空返事ぐらいは心を読まなくても分かりますよ」 「あ、あぁ、すいません。フーがなかなか帰ってこないもんでつい……」 「ふふ、いいですよ。分かってましたから」 口に手を当て上品に笑い、俺の目線の位置で飛び続ける大人な、けど茶目っ気のある妖精。 名はメルディア・エルスト・ミスティア。 「娘の心配をしていたのですから、怒ったりはしません」 そう、フレリア・エルスト・ミスティア、つまりフーの母親である。 約二か月ぶりの邂逅、そうではない。ここ一か月にこの人とは数度、フーの現状報告のようなものをしている。 なんだかんだ言って母親、娘の心配は尽きないようで。 「あの子が何をしているか、魔力を辿れば手に取るようにわかります。あの子がこんなにも一生懸命に、誰かの為に頑張る姿を見れたのはいつ以来でしょう……」 母親からしたらこれはとても良い傾向、だが手放しには喜べないらしく。 複雑そうな表情で空を見上げ母は独り言のように言う。 「あの子にとって貴方達と居る時間がとても幸福なものだと、しかしそれは本来私たちがあの子に与えるべきもの。……これではどちらが家族か分かりませんね」 メルディアさんがクスリと笑う、だがそれは自嘲の笑い。見ればわかる、何かに後悔していると。 それが何かは俺には分からない、けど言いたいことはある。 「だとしても、フーの母親は貴女です。俺はあいつを本当の家族のように思っています。けど本当の家族は貴女です、俺にはなれない。だから、なんというか……フーが最後に頼り、帰ることができる場所で居てあげてください」 どんなに足掻こうとも、遠くに居ようとも、縁を切ると言おうとも、家族は死ぬまで家族なんだ。 いや、死んでもずっと繋がりは切れない。俺がそうであり、誰もがそうである筈だから。 上手く言葉にできなかったが、心を読むことで言いたいことは理解してくれたようで。 切なげな顔から破顔し 「……そうですね、情けないことを言ってしまいました。私がこれではいけませんね。ごめんなさい、恥ずかしい思いをさせてしまって」 そう言いメルディアさんは微笑む。 いやはや、普通に感情もばれてる。
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