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先の出来事だけを話すと、結局根掘り葉掘り訊かれ全て話していた自分がいた。
話を聞き終えるとフーは驚くでも怒るのでもなく、ただ淡々と言う。
「やっぱり、お母さんだったんだ」
「知ってたのか?」
「ううん、ただ、何時も気のせいだって思ってたけど……今日は魔力が濃く残ってたから」
ここ一か月で薄々気づいていたのか。確信に近いものがあったと、そう言いメルディアさんが帰った道筋を眺める。
「家を出ても、やっぱり助けられてるんだね、私は」
それは出会った時の事。助言をもらい、フーを旅路に誘ったこと。
確かにああして言われなければ、俺は誘ったりせず、こうして一緒にいなかったかもしれない。全く別の場所で過ごしていたかもしれない、そんなたられば。
「良いじゃんか、甘えるのは子供の特権って言うし。親がいるうちに、甘えるだけ甘えといても罰は当たらんぞ」
するとフーはほっぺをプクーと膨らまし。
「甘えるって年でもないよ」
「いや、15歳だろ?甘える時期真っ盛りの年齢さ」
「私は翔じゃないんだから」
「残念、俺はその年ではもう甘えることもできなくなってたよ」
言って思う。この場で言うべきではなかった。失言だ。
「あっ……」
俺の両親の事を思い出したのかフーが黙ってしまった。
「いや違う、違うんだ。そんなつもりで言ったんじゃなくて……とにかく、甘えてもいいと言いたかっただけだから」
何とか取り繕いフーに語りかけると、数秒してフーはゆっくりと顔を上げた。
憂いはない、その代わりにその瞳には強い決意。
「翔の言ってることは分かるよ……けど、私はまだ帰らないよ」
妙に頑固というか、帰るのが負けとでも思ってるんだろうか。
「おお、いいさ。フーの気が変わるまで一緒にやってこう。本当じゃなくても、俺たちは家族なんだから」
この頃くさいセリフを吐く機会が増えた気がする。それでもフーは笑い嬉しそうに頷いた。
「うん、今はミーシャのために頑張ろ。翔も、明日は働くんだよ」
「人をニートみたいに言いおって。ちゃんと働くよ。けど今日は疲れただろ?もう寝よう」
「そうだね、ふぁ……お休み……」
よほど疲れていたのか、フーは近くの石の上で包まるとものの数分で寝息をたてはじめた。
野宿慣れしてるよこの子。
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