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2日目
快眠とは言えないまでも一夜を過ごし隣の山。急な天候変化なんぞやってこず、今日も苛つく程の快晴で。
俺は携帯食料を、フーは良く分からん果物を勝手に取ってきて朝飯兼昼飯を食べながら探索中。
しかしまあ……
「見つからん」
真夏日に山中を上り下りを続ければ限界は早く来る。
あの時の記憶も曖昧で巣の場所なんて覚えてるわけもない。汗を拭い途方に暮れているとフーから提案が。
「ねぇ、翔。別れて探そ。その方が効率良いよ」
「そうだな……そうするか」
どうにも駄目だ、言われるまで全く思いつかなかった。だらしねぇぞ戸神翔。
両手で頬を思いっきり叩き気合を入れなおす。目を丸くしてるフーを尻目に左手を胸に当てる。
創造するは片刃短剣、ダーク。装飾の少ないただのナイフ。それを逆手で持ち周囲の木にバツ印を付けて回り、最後の木に印をつけそこに手を当てる。
「微妙だけどこれを目印にしよう。日が暮れ始めたら、極彩鳥を見つけたとしてもここに帰ってくること。何となくで位置もわかるだろ」
思いつきの適当とも取れる俺の言葉にフーは頷く。
「うん、私は大丈夫。そういうの慣れてるから」
笑顔で自信満々にそう断言する。そしてフーは光を放ち始め、光の粒を振りまきながら目印の木々を数度旋回した。
「これでよし」
「……えっと、何したんだ?」
急な行動に呆気にとられているとフーは横目でふふんと笑い。
「魔力で標を付けたの。これで辺りが暗くなるとさっきの魔力粒が光るのだ」
どうだと言わんばかりのしたり顔を向けてきた。
何ともサバイバル技術に長けてますな。しかしこれは俺も助かる。
「すごいじゃないか。おしっ、準備もできたことだし行くか。フー、健闘を祈る」
「りょーかい。翔も今度は寝ちゃだめだよ?」
「分かってるって。じゃ、またあとでな」
「うん、また夜に」
パチンとハイタッチをして、俺たちは別のルートで探索を始めた。
ただ俺の掌にはピリリと痛む感覚と赤い小さな手形が一つ。ホントに加減ってものを知らないなあの子は。
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