日常のち誕生日

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―――――― 「ほら、出来たぞ」 「はーい」 叔父にそう言われカウンターに置かれた料理をテーブルへと持っていく。 翔とフーが別れた頃、天心では遅めの昼食を取ろうとしていた。休業日、客のいない店内はどちらかと言えば煩い二人がいないせいか物静かで。 「「いただきます」」 挨拶とともに箸を進めるミーシャと叔父。会話はあるが、ミーシャの視線は時折、翔とフレリアの定位置を向いたりして。 そんなミーシャに叔父は笑いながら言う。 「何だ、心配か?」 「それは……今日だってこんなに暑いのに登山なんて。それに……」 「誕生日の事か?」 「……うん」 ぴったりと叔父に言い当てられミーシャはしおらしく小声で答える。 あと一日というのに何を思ってか真夏に登山ときた。ミーシャにしても祝ってほしい気持ちが無きにしも非ず。帰ってこない恐れさえある二人に心配するのも仕方のないこと。 しかしミーシャの心配を余所に叔父はからからと笑う。 「そんな気にするな。あいつには明日には帰ってくるよう釘を刺してある」 「そうなの?……それならいいんだけど」 ほっとした表情をするミーシャ。そんな姪の姿に叔父は脈絡のない質問をぶつける。 「時 にミーシャ、お前好きな男はいるのか?」 「にゃふっ!?」 飲んでいた中華スープが思わず口から出かかる。 「な、なんでそんなこと訊くの?」 戸惑いを隠せないミーシャに叔父は平然とした表情で。 「なに、お前も18になる訳だからな。そういう男がいるもんか気になっただけだ」 親として心配なんだと、空々しく言う叔父にミーシャは無に近い声で返す。 「……いないよ、そんな人」 「そうか、いないか…………なあミーシャ」 「なに?」 「自分に嘘はつくなよ。それは先の未来でお前を苦しめることになるかもしれないからな」 妙な言い回しにミーシャは顔をしかめると持っていた箸をテーブルに置き。 「嘘なんてついてない、これが私の本心だから。…………ごちそうさま」 ぶっきらぼうに言い捨て、さっさと階段を上がっていくミーシャの後姿を眺め叔父は小さく笑う。 「お節介も親の役目ってな。さて、これからどうなるか」 楽しそうにそう言い、叔父は残っている料理にまた手を付け始めた。 翔たちに起こるハプニングなど知る由もなく、自らの料理を自画自賛して。
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